前座
結局、気が向いて書きました。
「見てください、空です! 海です! 私、飛んでますっ!」
「………ったく、とんだ大誤算だ」
このガキ、俺の愛機に乗って早々に寝たくせに、朝になって起きたらこのはしゃぎようだ。くそっ、風防に反響してめっちゃ声がうるせぇ。
「お前ちっと黙れ!」
「………はーい」
素直に謝り、ルージュは大人しくなる。先ほどまでの騒がしさはどこへやら。耳に届くのは、エンジン音と風切り音だけになった。
……………なんか気まずっ。と、とりあえず、なんか話題でも振っておくか。
「お前、算数出来るのか?」
「で、出来ますよ。バカにしないでください」
むすっとした少し拗ねたような態度で、ルージュは返事をする。あんな孤島に住んでても、一応算数は出来るのか。………暇だし、テストしてみるか。
「30+25の答えは?」
「………87」
「答えは55だ。お前、算数出来るんじゃなかったのか?」
「で、出来ます! 出来ます、算数! さっきはちょっと問題が難しすぎただけです!」
「じゃあ1+1は?」
「5!」
「…………あぁ、そうだな」
こりゃ、島に着いたら教科書買うようだな。
まだ前座だよ。