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愛機と共に空の旅を  作者: おいしいキャベツ(甘藍)
フグを食うことになった島
13/17

部屋

本編その7

「随分とまた、派手に暴れてくれたな」

「………いやぁ、まぁ、はい。そうですね」

 取り調べ室的な部屋に連行された俺は今、駅長と一対一で事情聴取を受けている最中。面倒事に巻き込まれたなと、今更ながらに思う。

「一対三という人数不利にも拘らず、君は手を出し、不良三人組を追い払った。そして、見ず知らずのおばあさんの危機を救った」

 一通りの流れについて、駅長は俺に確認を取る。それに俺は肯定で返す。

「………まずは、君が国民の危機を救ってくれたことには感謝したい。本当に、ありがとう」

 深々とお辞儀する駅長を前に、俺はそれなりの対応で返答する。感謝されるのは、久しぶりだった。

「だが、君達を危険に晒してしまったことに変わりはない。この点に関しては、本当に申し訳ない」

「別にあのくらい、どうってことないです」

「……流石は旅人だ。強さは並以上、といったところか」

 そういうことはあまり言わないでもらいたい。

「はぁ………。というか、いつ帰してもらえるんですか?」

 この場にずっといると気分が悪くなりそうだ。なんてことはもちろん、口が裂けてもいわない。

「そうだな………」

 駅長は近くにいた護衛と思しき駅員と小声で一言二言話す。会話の内容は……さっぱり聞き取れない。

 暫くして、駅長が俺に向き直る。

「帰っていいそうだ。聞きたいことは、あらかた聞けたしな」

 と、すんなり退出の許可が下りる。

 俺の予想では、まだ当分の間ここにいるようだと思っていたんだが……。それに、事件の当事者である俺を、そんな簡単に退出させていいもんなのか? 俺の元いた国じゃ、適当な理由をふっかけてかるく1週間は拘束されていたぞ。この島じゃ、この手の事はこんな簡単に終わるのか?

 少々の疑問を持ちながらも、俺は退出の案内に従い、部屋を後にする。

「あっ、遅いです! 何してたんですか!」

 俺が廊下に出ると、近くにベンチが設置されていた。そこに座っていたのはもちろんのごとく、ルージュ。あいつは俺を見つけるやいなや、小走りで文句を垂れてきた。

「ああ、悪いな。大人の事情ってやつだよ」

「なんですか、それ」

「お前も、歳を重ねれば分かるようになるさ」

 長く話すと面倒になると思い、適当に会話を終わらせる。「なんですか、それ」なんてルージュは拗ねちまったが、まあいいだろう。

「ホームまで送ろう。君には、迷惑をかけたからな」

 駅長はそう言って先導する。

「そういえば、ここの電車賃ってどうやって払うんですか?」

 電車に乗る前、不思議に思っていた事を今の内に聞いておく。

「ああ、それはタダだ」

「タダ?」

「ああ、タダだ」

「………まじかよ。すげーサービスだな」

 素直な感想が漏れた。

「冗談はよしてくれ。電車は国民が豊かに暮らす為の道具。それを国が提供するのは当たり前のことだし料金を取るのは以ての外だ」

「それって、ここはいい国ってことですか?」

 ルージュが質問する。

「いい国、というよりも、我々の仕事、というべきかな」

 その言葉を聞いて、俺は感心した。国民の為を想う国。国民の為を想う公務員。それは、一見簡単そうな印象を持つが、実際はそうじゃない。サービス業をしている人間が、いかに客という相手から金を毟り取るか必死に考えているように、少なからず公務員にもそういう事を考えている人はいる。けれど、この島の雰囲気、設備、駅長の眼差し。それを見ていると、本当に国民を想っているだな、と信じられる気がする。一応予防線を張っておこう、気がする。

「さて、着いたな」

 駅長がそう言うと、そこには俺が電車から降ろされたホームがあった。

「確認しておくけど、行きたい場所に行く方法は分かっているかい?」

「分かってますよ。流石に」

 意外とどこの島でも国でも整備されているものだ、電車というのは。

「フレアさんがそういうので、私も分かります!」

 隣でそんな事をほざくルージュ。よし、ちっとからかってやろう。

「うわ〜、俺、行き方分からないかも〜(棒)」

「…………えっ」

「ドン引きはやめろ! 俺が悲しくなる!」

「ははっ! 面白い旅人だな。君達に会えたことは、当分忘れられそうにないな」

 そうかい、そりゃ良かったよ、嬉しそうで。てか、建前でも一生忘れられないって言ってほしかっぞ、俺は。

その8へ!

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