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バカ殿様に転生しました。  作者: 吉良山猫
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ツツガムシ病

永禄10年山形城


ツツガムシ病と後世で呼ばれる風土病は最上川、雄物川、信濃川、越後国阿賀野川流域で猛威をふるう恐ろしい殺人病であった。


上座に座る俺と虎千代の背後に貼られた紋は熱田神宮の神紋である。

熱田大神の使徒である俺が行く先には必ず熱田神宮の最高位の神官である千秋家の者がついて周り信託を告げる際には必ず一枚かむのである。


熱田神宮と熱田大神、そしてその子孫である帝は俺を正式に認めており俺の活躍を天照大神と朝廷の権威の回復に役立つと大変応援してくださっているのは周知の事実だ。


実際この時代の腐った寺院勢力にうんざりしていた俺は熱田大神を中心とした神道の国にしようとしているのは事実である。


そして平家の子孫である織田信長の実子であるこの俺も熱田大神の血を引いているので覚醒遺伝と言うやつである。


平家の始祖たる天皇はだれだったか俺は忘れてしまったが、平清盛がその時代最強の武将だったことは理解している。


俺は熱田大神の神託としてツツガムシ病に関して最上義光に話をした。


ツツガムシ病はツツガムシ(ダニの一種)に刺されたものがかかる病気で幼虫に刺され高熱や発疹などがでる致死率が高い病気である。


しかしこの時代において治療は中々難しいが正しい知識さえあれば予防策はある。


ツツガムシ病の症状である倦怠感や頭痛、発熱の後に現れる発疹、直径1センチ程の黒いかさぶた上の刺され口によって発病の把握をすることが第一として上役への報告義務を下々の村々まで徹底させること。


ツツガムシ病の発生が確認できたらその地域への立ち入りを禁止して、肌の露出の禁止、水浴びなどによる洗い流しの徹底である。


俺の話を聞いていた最上義光をはじめとする最上家家臣団は感銘を受け、虎千代や上杉家臣団も目から鱗だったらしく感銘を受けて俺に尊敬の眼差しを向けてくる。


熱田大神の名を高め権威を上げることにより地方の仏教などの勢力の拡大に釘を刺す裏目的があった俺としてはいささか背中がむず痒い。


しかし、俺の神託と言う名のアドバイスの後にツツガムシ病の被害が最小限に抑えられ俺と熱田大神が未来永劫感謝され続けるのは今はまだ誰も知らない。


未来地図で言う東北地方の裁定については最上領より北方に関しては俺達が影響力を及ぼせる勢力による掌握が可能になった為、俺達は最上領を離れ越後へと向かうのであった。



越後国某所ある老人サイド


世間のしがらみから離れて越後国某所にて密やかに余生を過ごす老人がいた。


その老人は後世でいえば70代などまだまだ現役の年齢であり老け込むには早すぎる年齢であるが、自身の人生に既に満足しきっていた。


主君が幼き頃より支えてきたその老人は主家が全てであったが、それ以上に主君が1番であった。


越後国長尾家の時代から数代に渡り仕え続けた重臣中の重臣であり、当代の主君からは唯一の軍師と呼ばれた老人には満足いく人生ながらも二つの深い後悔があった。


一つ目の後悔は、現在の君主の兄である先代国主が無能で病弱かつ酒池肉林に溺れる愚君だった為に優秀で聡明と噂の現主君を他の重臣と計って当主の座につけたのである。


しかしその主君は優秀ではあったものの実は女子であった為に、国の為、民の為とはいえ女子としての本来の幸せな未来を奪ってしまったのである。


そしてもう一つは、毘沙門天を理由に女子とばれて家臣内の団結の崩壊を恐れて不犯を貫き跡継ぎを作ることが出来なかった主君を諌めることが出来なかったことである。


主君のおかげで様々な問題があったにも関わらず最終的には川中島の戦いなどを通しても結果的に勝ち抜いて名誉ある重責である関東管領の職と上杉の名字まで得ることが出来た。


だからこそ老兵は去るべきと思い主君の1番の身内の敵になり得る長尾政景を船遊びに誘い事故に見せかけて暗殺、心中したのだが何故か生き残ってしまった我が身を呪いつつ儂は隠遁した。


世間では儂と長尾政景は船遊び中の事故で溺死して長尾政景の死体は上がったが儂の死体は行方不明になっているらしい。


助かった後に事件の詳細が漏れぬよう儂は自害しようとしたが、船上で惜しくなかったはずのこの命だが、主君のことを考えると行き先を見守りたいと生きることへの欲が出てしまいどうしても死ねなかった。


主君は幼い頃から儂のことを慕ってくれており爺、爺と後をついて来るので、儂が祖父などでは恐れおおいといえば「我にとって爺は爺だけじゃ。いつか必ず孫を抱かせてやるぞ」とニカッと笑う主君が愛おしくてたまらない。


そんな誰よりも大切な主君が離れた地にて子を成して越後国に帰ってくると親交ある軒猿の棟梁より話を聞いた。


ならばもはや隠遁している場合ではない。


久々に正装をして髭を剃り、髷を結った儂は春日山城に向けて思いを馳せるのであった。


今逢いに行きます。




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