建国
いつも誤字脱字ありがとうございます。
名古屋城
元服して織田三郎信虎と名を変え官位も授かった俺に関して妻虎千代や家臣団は感無量だったらしく暫くそれを理由に酒の場を作り祝っていたようである。
特に自身の策略と根回しにより自身が象徴的な字である虎の字を俺の名前の一部にすることが出来た虎千代は終始において御満悦である。
名古屋城では今日も戦国最強の知勇兼備の将の一人として名高い斎藤朝信が、龍王丸、虎王丸に骨抜きにされて「越後の爺ですぞ」などと頬擦りをしておしめの交換まで手伝っている。
既に子供のいる上杉家臣団の名将達は我こそが越後の爺だと競い合っているのである。
最初からいた河田長親はともかく、今回他者との競い合いに勝つことにより越後国より産後最初に来ることが出来た斎藤朝信は正に勝ち組であり、越後に残った者達から言えば抜け駆けである。
河田長親にしてもそうだが、斎藤朝信も父信長はおろか甲斐の虎武田信玄も認める程の伝説の名将なのである。
父信長や権六達からは斎藤朝信に小便を引っ掛けて笑う俺の子は将来きっと大物になるなと遠い目で言われてしまった。
御館の乱により戦力が半減以下になってしまった史実の上杉家であるが、それが今後起こらなければどうなるかは言わずもがなである。
そんな時に定期的に行き来している蝦夷より戻って来た村上通康が俺に急ぎ見せたいものがあるとのことだったので俺は虎千代達と馬で名古屋港へ向かった。
「若様、いや今は織田信虎様でござったな。ガッハッハッハ。信虎様の言いつけ通り上手くいきましたぞ」
来島村上水軍の長である村上通康は以前より言葉使いがまるくなったが、やはり海賊と言われるだけあって圧が強い。
「で、あるか。久しいな通康よ。でどの件だ?」
ニヤリと笑った村上通康は懐より包みを取り出して皆の前で広げて見せる。
その紙包からは何やら上質な白い粉が見えている。
「ささっ、品定めを」
「で、あるな。こ、これはかなりの上物だ」
「ガッハッハッハ。流石信虎様、よく価値をおわかりで」
「これは日の本がひっくり返るな」
「まことにごさる」
俺と村上通康が悪い顔をしながら白い粉を舐めて笑みを浮かべているのを怪訝に思った虎千代が紙包みを奪い取りその白い粉を舐めてカッと目を見開く。
「婿殿、まさかこれは砂糖か?」
「で、あります」
「これほど貴重な物をどうやって手に入れたのじゃ」
「砂糖の作り方は複数ありますが、代表的な物は南方のサトウキビと寒冷地の甜菜大根です」
「な、なんと大根とはそのようなことが」
俺は皆に大根と言っても何でも良いわけではないことと、甜菜大根という丸い大根を蝦夷地で武藤喜兵衛に探させて栽培するように命じたことを話した。
葉や搾りかすは家畜の餌となるので蝦夷地に届けさせた乳牛や羊の餌などにも有効活用される。
後方支援がしっかりしている以上蝦夷地の開拓は想像よりも進んでいるのである。
腹黒…ゲフンゲフン、知将武藤喜兵衛の差配もありアイヌ民族との関係も上手くいっている。
砂糖はこの時代には、同量の砂金と同じ価値があると言われる程に貴重なものであり日の本では薬とされてきた。
砂糖は天竺で砂糖きび作られたのが最初と言われており、史実で寒冷地で育つ甜菜大根から砂糖を作ることに成功するのは何世紀も先のドイツである。
俺は蝦夷の大地に砂糖という名の砂金を生み出す広大な金山を手に入れたのである。
その後すぐに天王寺屋宗及と千利休を名古屋城に呼び出して砂糖について説明をすると普段冷静な両名が腰を抜かすほどに驚いていた。
俺は砂糖の取り扱いに関して国外と国内商人相手の取り引きは天王寺屋に、朝廷や公家、大名や寺社に関する取り引きは千利休に任せることにした。
何故両名に任せたかと言えば砂糖の利権の集中は無駄な妬みや僻みの原因となるのもあるが危険度分散の意味合いもある。
それに適材適所でそれぞれ得意な分野で砂糖を扱えるのは政治的な意味でも大きいだろう。
両名に父信長には砂糖の出所は俺ではなく琉球王国や明と取り引きをしているとでも言って誤魔化すよう口裏合わせをした。
俺が表に出て活躍をするのは実子ではあるが嫡男ではない織田家より妻の虎千代が当主である上杉家の方が安全だと考えているので目立つのは最小限にしたいのである。
織田家内での領地は名古屋以外に増やすつもりはないが、上杉家の領地は今後織田家に負けじと増やすつもりだ。
そして俺はと言うと蝦夷地の開拓と制圧に目処がついたので蝦夷帝国の建国を日の本を除いた諸外国に宣言して初代皇帝織田信虎となり戦国の世の日の本以外への領地拡大を目指すつもりだ。
蝦夷地の者達はすでに相手を尊重して共存しつつも支配下に置き、統一は完了している。
短期間に蝦夷地を統一できた理由は黒真珠号などの大型船とその火力を見てその主人である俺のことを神の使いと勘違いしたアイヌ民族達の方から傘下に入ってくれたことが大きい。
まあアイヌの神々とは違うが熱田大神の加護を受ける俺が神の使いなのは間違いではないので、そこは彼等の好きなようにとらえれば良いと思う。
蝦夷地の地名は令和の時代のものを採用することにしており、帝都は札幌と定めたのであった。
忙しく更新が遅れることもありますが、応援して下さる方々もいらっしゃるので完結するまで執筆させていただきますので応援宜しくお願い致します。




