新たな家臣
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名古屋城
俺は苦労の末に遂に味噌の上澄み液でない真なる醤油を手に入れ、養鶏場を作ることにより鶏の増産に成功して、にんにく、生姜、清酒、片栗粉、小麦粉、胡椒、揚げる為の油を手中に収めることに成功した。
この食材を見ればわかる者ならばわかる聖なる供物と言っても過言ではない鶏の唐揚げの材料が遂に完璧に揃ったのである。
老若男女含めて唐揚げが嫌いな者は少数派であり、ほとんどの者達がこの絶対的な旨味の暴力に抗えない。
唐揚げの恐ろしいところは、たとえそれを食べたことのない者であってもその匂いに魅了され間違いなく美味であると脳に訴えかける。
数は揃えたといえど最高級品であることは間違いない為、その試食には選ばれし者しか呼ばれていない。
俺の両親(義母も含む)と俺の重臣達は勿論であるが、今年三河国に嫁いだ五徳姫とその夫である岡崎三郎、そしてその傅役兼筆頭家老に出世した本多平八郎忠勝もいた。
俺は東国無双の本多平八郎が約束通り妹の婿殿の守護者になったことに安堵して胸を撫で下ろす。
徳川家康を筆頭に腹黒い者達が多く渦巻く魔国三河において本多平八郎ほど優秀な護衛はいない。
三国志の時代の蜀の趙雲の主君の子を護っての敵陣突破ではないが、本多平八郎なら何かしらの大きな問題が発生しようとも単騎がけで岡崎三郎と妹五徳を守り敵中突破を果たして名古屋城まで辿り着けると俺は信じている。
あくまでも俺の評価であるが、後世に伝わる徳川四天王に順位をつけるならば、1番は勿論東国無双本多平八郎忠勝であり、2番は晩年に政治的混乱を招くのを嫌い、自身は権力を欲せずに一歩後ろに身を引いた無の旗印で有名な榊原康政、3番目は言わずもがな井伊の赤鬼、最後に酒井忠次である。
歴史は勝者の歴史であり、詳細は不明だが絶世の美女だった瀬名姫の粛清と秀才と呼ばれた徳川信康の切腹、酒井家のその後の待遇を考えれば色々とかんぐってしまう。
まあ今世において様々な備えはしているがそれでも愛する妹の五徳姫が不幸になりそうなことを徳川家康がやらかせば武田信玄に攻められる前に俺が山県昌景を使い脱糞させてやるのは間違いない。
幸い岡崎三郎は俺のことを熱田大神の加護を授かりし使徒(神の使い)として崇めてくれているので末永く守ってやろうと思っている。
織田家の人間は頭が良い人物が多いのは周知の事実であるが、豚もおだてりゃ木に登るではないが、俺も父信長に似すぎた為、持ち上げられて頼られるとその相手を放っておけない。
しかし、俺は父信長以上に悪意に敏感な為、仇なす者には容赦はしない。
適材適所と言う言葉があるが、俺のように熱田大神を後ろ盾にした知勇兼備の者がトップに立つことにより家臣団は何倍にも強くなる。
本多平八郎と前田慶次郎で2人で槍を使った手合わせをしていたようだが、汗をかいた後にはお互いを認め合う良い好敵手となっていたようなので何よりである。
本多平八郎の蜻蛉切と慶次郎な朱槍での打ち合いは迫力があるものであり虎千代も目を細めて「あやつらと真正面から力でやりあえるのは上杉家中でも弥太郎くらいかのう」と笑みを浮かべている。
ここで何故柴田勝家は我もと声をあげないのかと言えば、権六は特注の巨大中華鍋で「フンゴーフンゴー」とふんどし一丁になり海老や牡丹肉、青葱、人参、支那竹、卵をたっぷりと入れた炒飯を作るために腕をふるっているのである。
ことの発端は叔母上にあたる市姫様が用意された大鍋を見て「凄い鍋なのです。あのような大鍋を使いこなす殿方はさぞお強く逞ましい方なのでしょうね」と顔をほんのり朱に染めて溜め息をついたのを側で見聞きしていた権六が目を光らせて俺にその役目を任せて欲しいと懇願してきた為である。
権六は確かに関羽雲長のような外見であるが毛深く厳つい以外は実はイケメンだったりする。
その横でこちらも特注の大鍋で唐揚げを器用にどんどん揚げる大男がいるのだが、顔が醜いという理由で顔に僧兵が被る頭巾のような物を被っている。
「半蔵よ、あの者は何者だ」
「ハッ、若様。実は旧知の仲の者であり我らの待遇を羨ましく思い一族で拙者を頼ってきたのでござる」
「で、あるか。半蔵の旧知の者と言うことは忍びであるか?」
「ハッ、その通りでござる。あの者の腕は拙者が保証致します。忍術も拙者と互角にござる」
「ほう、それは只者ではないな。彼奴を呼んでくれ」
唐揚げ揚げは他の者に変わってもらいその大男が俺の前に膝まつく。
「その方仕官希望らしいな」
「ハハッ」
「あいわかった。今より我が直臣と致す。一族郎党この織田茶筅丸が責任を持って面倒をみる」
「ありがたき幸せ。しかし本当に宜しいので。拙者はまだ名を名乗っておりません」
「私は半蔵のことを信じている。それに半蔵と互角にやりあえるものなど片手ほどもいないであろう。なあ風魔小太郎よ」
「ハハハーッ。お見それ致しました。この風魔小太郎と一族郎党茶筅丸様に一生忠誠を誓います」
「で、あるか。励むが良い。期待しているぞ小太郎」
こうして風魔小太郎が俺の家臣に加わったのは嬉しい誤算であったが、俺はその縁を熱田大神に感謝するのであった。




