生贄
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名古屋城
俺は服部半蔵より例の命を助けた武将に関しての調査報告を受けていた。
結論として最終的に俺がくだしたのは彼の武将は冤罪であり陥れられたのである。
この人物を巡るやりとりに関して、俺は少なくとも3〜5名の黒幕がいる事を突き止めた。
黒幕の1人目は、その者の妻の実の兄であり、凡庸、阿呆、戦下手、気が弱い、公家かぶれ、遊び人などと呼ばれた男であり、噂の大半はあっていたが実は腹黒く貴族間の騙し合いのようなことに対する才能に特化する男が自らを慕う義弟を利用して自国の安全を得る為に自身の妹すら見殺しにして計画を実行した腹黒である。
2人目は実の祖父でありながらその状況を利用して煽り実の息子を孫に殺させようとした男た薄情ものだ。
それが内乱にでも発展すればその混乱に乗じてことを起こそうとしていたのだ。
3人目はその者の妻の実家と関わりが深く、従兄弟にあたる人物であり、1人目、2人目と協力してその者に濡れ衣を着せた人物である。
誰よりも主君を慕うその者の腹心の弟を騙して偽の手紙を持たせて偽りの謀反の証拠とした。
腹心の弟は主君と深い関係であり信頼を得ていたと共に、腹心の弟という立場が嘘を真にした。
自身の策がうまく行った際にその従兄弟は、もしあの愚か者が自身の兄と無実の主君の嫡男を死に至らしめたことを知ったらどのような顔をするかと、目と口を三日月のように歪めるのであった。
4人目は対象者を絞れなかったがその者の失脚が出世に都合良き腹黒である。
そして最後の1人は自身より弟を愛して後継者にしようとした父と同じく、誰より優秀であるが何故か気に食わない正室の子を廃して愛する側室が産んだ四男を後継者にしたいと思うその者の父親であった。
その者は政略結婚でありながらも妻子を愛しただけ、ただそれだけであった。
だからこそ、父親が理由なく相手が弱くなったからと妻の実家を攻めることを宣言した際に反対したのである。
令和の現在の考えではその者の意見が正しいが、戦国時代に人権はない。
その者は親に逆らう不届き者の烙印を押され、家中で謀反を企んでいるとの噂を流されて追い詰められたのである。
何故優秀なのに排除するのかは、その者の祖父と父の関係が鍵であり、それと違うのは結果が逆になったということである。
その者の父はお高くとまり自身を陰で山猿とほざく正室を愛しておらず、手篭めにした側室を愛していたのである。
その者としては青天の霹靂であり、その身は家中の陰謀の渦の生け贄となったのであった。
今となってはどうしようもないが、その者の父の重臣と思われている者の中にその者を誰よりも愛して慕う者が数人いることは誰も知らない。
不死身の鬼◯◯、◯◯の副将、彼等は誰よりも陥れられた者を心配しており、その者が死んだと発表された際には肩を落とし落胆したのである。
最終的に言えるのはその者が味方だと思っていたもの全てが敵であり、敵だと思っていた者が味方だったという事実である。
蝦夷に出立する前に俺からその事実を知らされたその者は血の涙を流し「俺は人間を辞めるぞ」と修羅の道を歩むことを心に誓うのであった。
それらの全てを聞いた俺はあまり良い気分ではなかったが、場面により敵国の優秀な人材の切り崩しに繋げることが出来るかもと考える。
その者を救い出す際に懸念材料だったのが鳶加藤の存在であったが、どうやらその地にはいなかったようで俺は胸を撫で下ろした。
そして後日、名古屋城内において俺は服部半蔵と気になっていたことについて話す。
「半蔵よ、鳶加藤はどこにいると思うか」
「わかりませぬがあの者は神出鬼没、案外近くに潜んでいるかもしれませんなあ」
「で、あるか」
「若様はあの者が気になるようですが何故にございますか?」
「なに、天下一の実力がありながら不当な扱いを受け続けて諸国を彷徨っているときく。不憫ではないか」
「あの者は悪鬼羅刹のように恐れられ嫌われる化け物でござるぞ」
「ワッハッハッハッハッ。悪鬼羅刹や化け物がなんだ。俺には熱田大神がついている。神の前に恐るもなどないわ」
「…………若様、もしその者が若様の目の前に現れたら如何いたしますか」
「うむそうだな、私の直臣にならぬかと勧誘するといたそう」
「正気でごさるか」
「フフフフフ、侮るでない。私に二言はない」
「本当の本当でござるか」
「くどい」
次の瞬間服部半蔵は姿を変え、目つきの鋭い細身だが筋肉質な男に姿を変えていた。
「お初にお目にかかる。加藤段蔵にござる」
加藤段蔵を名乗るその者は俺の前に跪き臣下の礼をとる。
「やはりそうか。たいしたものだ途中まで気づかなかったぞ。本物の半蔵の気配を感じるまではな」
「半蔵、いるのはわかっている。出てきて説明いたせ」
俺の叫びと共にスッと服部半蔵が姿を現して跪く。
「若様申し訳ありません」
「よい、半蔵のことだ何か深い理由があるのだろう」
「ハハッ」
俺は半蔵より加藤段蔵とのやりとりを聞かされてニヤリと口角をあげる。
「加藤段蔵、私に二言はない。私に仕えてくれるか」
「ハ、ハハーッ、この加藤段蔵若様の為ならばたとえ火の中水の中、なんでも致します」
「で、あるか。今まで苦労したな段蔵。私の元に来たからには悪いようにはせん。頼りにしているぞ」
「ハハーッ」
頭を下げる段蔵の目には枯れてしまったはずの涙が光っていたのであった。
実は筆者の吉良は、ジョジョの吉良吉影、ガンダムSEEDのキラ・ヤマト、デスノートのキラにかけています。




