出航準備
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名古屋城
我が尾張国では現在鶏、うずら、羊、馬、牛を家畜として育て増やしているが、そこに兎を加えようと考えている。
蝦夷や樺太、千島列島などの開拓の為には防寒具が必須であり旧帝国日本軍が兎の毛皮を防寒具に加工して、肉は食用にしていたのを思い出したからである。
兎は繁殖力が強くどんどん増えるのと、餌は雑草や野菜と穀物のくずで大丈夫なのも大きい。
肉は干し肉にして船に積み込めば貴重な保存食となる。
他の動物は熊や猪は家畜に向かないので狩猟対象とし、鹿も似たような印象だが令和の奈良公園の鹿のこともあるので試してみても良いかもしれない。
その他で現実的なのは琉球王国にいるアグー豚と山羊を狙っている。
アグー豚はどすこいと体当たりしてきそうな厳つい風貌であるが、実はその肉の美味さは他の豚の追従を許さないほどなのだ。
アグー豚だけはどのような手段を使っても手に入れたいと思っている。
父信長に「琉球王国にはアグー豚と言う豚がいて、その見た目は猪のようだがその身は柔らかくとろけるほどの肉の美味さであるようですよ」と話した際には父信長の目の奥が僅かに光った気がした。
父信長は美味いものや珍しい物には目がない為、執拗にアグー豚を狙い続けるかもしれない。
山羊は食料としての意味合いや雑草駆除などの使い道もあるが俺が重視しているのは山羊の乳である。
食料として山羊の乳は優秀であるが、母親が母乳が出ず周囲に母乳が出る人がいない場合に臨時の母乳代わりに使えるのではないかと考えている。
それらの用途で村々に山羊を数頭配置すればより幼子の死亡率が減り尾張国は栄えるはずだ。
蝦夷開拓船団に載せて運ぶ物資のうち酒は梅酒の樽を多く持たせる予定である。
梅酒は樽に入った梅ごと持って行かせる理由として、梅酒は梅に含まれる抗菌作用などの良い栄養素が含まれるのと、梅酒の梅自体が高栄養な保存食であるためだ。
またロシアなどの寒い地でウォッカなど酒精が強い酒が好まれるように蝦夷や樺太などには酒精が強い酒が兵の士気を高めるであろうという狙いもある。
勿論ご飯のおかずとして優秀であり長期保存が効く梅干しを大量に積み込むのも忘れない。
あと壊血病予防として新鮮な野菜や果物、野菜の酢漬けを積み込むのも重要である。
壊血病とは大航海時代に船乗り達や開拓民に世界一恐れられた原因不明の不治の病だからだ。
その症状はあざができ歯や歯茎の出血、毛髪や皮膚の乾燥、貧血、倦怠感、筋力低下、易刺激性、体重減少、筋肉痛、関節痛、出血傾向、内出血など様々な症状が出た後に死に至ることが多い。
俺は聖人君子ではないので実はビタミンC欠乏症でそれらを摂取することにより予防、治療が出来るのだが、大航海時代のど真ん中に参戦する俺としてはこの知識は南蛮には漏らさないつもりだ。
勿論壊血病の予防法や治療法を取り引き材料にすれは想像以上の対価が見込めるがまだその時ではない。
織田家や上杉家の国内支配が進めば国内においては熱田神宮の神薬として柑橘汁などを調合した物を売り出すつもりだ。
蝦夷地におけるアイヌ民族懐柔の取り引きの品として鉄製品や陶器なども用意しようと思う。
尾張国内でも、今後本格的に陶器の製作を始める時が来たのかもしれない。
幸い我が尾張には日の本の中でも歴史ある瀬戸焼の産地がある為、そこに令和の俺の知識を組み合わせた瀬戸焼と別系統に別れる熱田焼きの窯元を作れば良いのだ。
史実において瀬戸焼きの職人達は父信長により美濃国へ移転させられてしまう為、尾張瀬戸焼の窯元と熱田焼窯元を取り仕切る人物の最低2名だけはなんとか死守して、後は移住者達に仕事として覚えさせればよいであろう。
蝦夷は魚介類や海藻などの海洋資源や、木材資源、砂金、砂白金、砂鉄、金、銀、銅、鉄、硫黄、クロム鉱、石綿、水銀、重晶石、鉛、亜鉛、石炭、砕石、レアメタル、ニッケル、天然ガス、油田等の鉱物や天然資源などの利点をあげたらきりがない。
幕末の榎本武揚らが蝦夷共和国を設立するほどに蝦夷の地は重要で有益な拠点なのだ。
昭和の時代においては憎きソビエト連邦の裏切りと条約違反により我が国固有の領土である北方領土までもが不法占拠される事態となったが、この時代においては我が織田家が樺太どころかシベリアまで先に領土化してみせる。
そして今回この俺には蝦夷開拓における最強の切り札があるのだ。
天王寺屋を通じて明より仕入れた蛭石を高温で熱した物と鉄粉と食塩水と布袋を使い作った使い捨てカイロである。
使い捨てカイロの仕組みは鉄粉に食塩水をかけて早く錆びさせるようにしたもので蛭石を熱した物はそれを助ける働きがあり布を密閉してそれを擦ることにより熱を発生させるのだ。
防寒具として綿、毛皮、羊毛などを組み合わせた現在の兵装と異なる昭和の寒冷地に配置された旧帝国日本軍のような兵装を用意した。
そして秘密兵器の使い捨てカイロ、体温をあげる酒精の強い酒や唐辛子を利用した品々など出来る限りの防寒対策を施した蝦夷開拓隊は、遂に出航の時が目前に迫るのであった。




