黒真珠
いつも誤字脱字訂正ありがとうございます。
永禄9年秋名古屋城
我が尾張にて俺が主導した作物は全て大豊作であり皆が笑顔であった。
領地が潤い民が笑顔で過ごす中、俺は秘密裏に完成させていた旗艦であるガレオン船黒真珠号とキャラベル船2隻を離島にて虎千代に披露していた。
俺の船団は今現在は尾張近海での戦いへの投入は全く考えておらず、どう遠方に進出して拠点を作るかである。
そのため名古屋港への入港はさせずあくまで離島に造船所を作り造船していたのである。
俺の令和の知識があれば日本海軍規模の戦艦を作れる自信はあるが、その為にも資源の確保が第一である。
そして俺の現段階での最終目標は蒸気機関の完成と蒸気機関の船の造船である。
まずは日の本の船は安宅船などをみても明のジャンク船に劣るなど全体を海に囲まれた海洋国家としては貧弱すぎる。
蒸気機関の技術は頭に入っているが資源不足の現状は世界最速の黒いガレオン船とキャラベル船をまず作るに至ったのだ。
旗艦の黒真珠号は3本マスト、横帆7枚、縦帆5枚、砲甲板は一層で20門の大砲を装備し、上甲板にも大砲を10門配置してある為、大砲30門を備えた超攻撃型強襲船である。
間違いなく黒真珠号はこの時代世界最強であり、南蛮船を海の藻屑にできる性能だと自負している。
船首には織田木瓜紋が輝き、中心の帆には熱田神宮の神紋が金で描かれている。
これはキリスト教の十字軍の十字架などに対抗する意味も含んでいる。
キャラベル船は主に人員や物資の運搬が役目な為、前、背後の一門ずつの合計二門の大砲しか備え付けていない。
もし遠征先で他国の船と戦闘になった際には、キャラベル戦2隻を先に行かせて黒真珠号で敵を殲滅する戦法だ。
黒真珠号の船長は村上通康であるが、通康が船長だとどうしても織田家の正規軍が海賊にしか見えない。
父信長には鍛治村の成果として国崩し(フランキ砲)を数門献上しているが、俺の黒真珠号の大砲はカノン砲である。
何故か俺の背後で鼻を天狗にしている葵がビシィと決め姿にて「黒真珠号の火力は世界一イィィィィィィ!」と叫んでいるが何も見なかったことにしよう。
火薬に関しては今は天王寺屋から仕入れているが、あと一年と半年ぐらいで転生後すぐに仕込みを行った大量の硝石が完成する為、偽装の為に天王寺屋からも火薬を仕入れるが、自前の大量の火薬を手にすることになる。
この黒真珠号の速度と夜間目立たない漆黒の船体により、津軽海峡を横断する形で名古屋港と直江津港
までの道のりを最速で移動出来ることを虎千代に話すと、虎千代は顔を上気させて喜んだ。
これで心配なく領地運営と夫婦生活の二刀流が出来ると。
その後評定を開き俺は家臣団に秘密裏に蝦夷へ進出することを打ち明ける。
「なるほど、若君がパネル式なる現地で組み立てるだけの砦や長屋などの材料をこの半兵衛に命じて作らせていたのはそのような理由だったのですね」
「で、ある」
俺は日の本の地図と蝦夷の繊細な地図の両方を広げて皆を近くに寄らせる。
「まずはこの苫小牧なる所に港を整備してこの札幌なる場所に拠点を作る」
「ふんごー!若様、このお役目この権六にお命じくだされ」
柴田勝家こと権六が大声で叫びながら胸をどんと叩く。
「権六よ、気持ちはありがたいのだが織田家重臣のお主が蝦夷に行ってしまっては今まで父上に黙っていてくれたことが無駄になるぞ」
「今は一益も父上に極秘裏に命じられた北伊勢攻めの準備で私の側を離れているのだ。なおさら権六には側にいてもらわなければならない」
「ごほん、でしたらしかたありませんな」
「わかってくれたか権六、だが戦の際には頼りにしているぞ」
「ハハッ、その際にはこの権六にお任せあれ」
「ですが若様、誰に命じるつもりですか」
「うむ半兵衛、武藤喜兵衛に任せようと思う。この名古屋城は最早天守閣以外はほぼ完成している」
「なるほど、喜兵衛でしたら適任かもしれませんね。戸隠忍軍もついていることですし」
「喜兵衛、頼めるか」
「ハハーッ、この武藤喜兵衛必ずや若様の為、この大任成功させて見せましょう」
「で、あるか。この蝦夷の詳細地図と鉄砲100丁を授けるから上手く使うが良い」
「ハハッ、ありがたき幸せ」
こうして武藤喜兵衛が蝦夷開拓の総責任者に決まった。
人員や物資は船を往復させて届けるのと、苫小牧常駐の水軍として現存の安宅船を旗艦に小早船を30隻ほどつける。
村上水軍が周辺国の船を拿捕しているので船の数には余裕があるのだ。
また、喜兵衛には蝦夷に住むアイヌ民族の文化や習慣を教えるとともに、アイヌ民族が欲しがる米などの穀物や野菜などで懐柔し、時として鉄砲を使い威嚇してなるべく殺さずに味方に引き入れるよう命じた。
内陸、そして樺太の開拓にアイヌ民族の協力を得られれば時間短縮が見込まれるので上手くやって欲しい。
松前の徳山館の蠣崎氏は、拠点作りが完了後従うようならば傘下として、従わぬようなら黒真珠号の射撃訓練の的になるであろう。
俺は北の大地の方面を睨みニヤリと口角をあげるのであった。
その顔を見た権六達は悪巧みをしている信長様の顔にそっくりだと若干引き気味だったとか。




