毘沙門天
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名古屋城下虎千代目線
遂に目的である名古屋城の城門が目の前に迫って来た。
この名古屋城が忌々しい後北条家の小田原城より優れているのは間違いない。
自身が相手の神威に気付いているように婿殿も同じ状況であろうことがわかる虎千代は名古屋城の城門の前で長親に毘沙門天の旗を掲げるように命じた。
すると直ぐに城門が開いたかと思うと、横一列に並んだ侍の中で一つ前に出ている美男子が西洋風の礼をする。
「「「「「尾張名古屋へようこそ。関東管領上杉輝虎様」」」」」
虎千代は絶句して固まったが、直ぐに自身を取り戻し「出迎え大義である。会いたかったぞ愛しの婿殿」と軍神の顔になっていた。
まさかの歓待の出迎えに軍神上杉虎千代は悪い気はしていなかった。
そして産まれてこれまで感じたことのなかった胸の高鳴りに戸惑っている。
織田茶筅丸に関して「話が違うではないか、あの姿は最早成人した男性である。ならば夢で終わると思っていた我が大願も叶うかもしれぬ」と身体に力が入るのであった。
この時代の成人の身長は戦国最強の1人と言われる赤備えの山県三郎兵衛昌景であっても130㎝後半なのである。
織田家の最強遺伝子を色濃く受け継ぎ、肉食によるたんぱく質を中心とした様々な栄養をとり成長した茶筅丸は最早別格の存在であった。
虎千代は「あれが熱田大神の加護と言うものか」と心で思い、茶筅丸は「あれが毘沙門天の加護と言うものか、まるで二十歳の乙女ではないか」と目を見開いた。
「出迎え感謝する。婿殿の元にも優秀な忍びがいるようで何よりだ。のう伊賀忍軍頭領服部半蔵よ」
虎千代、いや関東管領上杉輝虎は横一列に並ぶと茶筅丸の家臣の中に伊賀忍者筆頭服部半蔵とそれと同格の百地三太夫を見つけてニヤリと口角を上げる。
毘沙門天の加護による神威なのか、軒猿の働きかはわからぬが自身らの正体を見抜かれた服部半蔵と百地三太夫は奥歯を噛み締める。
そして織田茶筅丸の前まで進んだ関東管領上杉輝虎は、茶筅丸の胸元に手をやり引き寄せて接吻をかわす。
「会いたかったぞ婿殿、妾の真名は上杉虎千代じゃ。虎千代と呼んでほしい」
「で、ありますか虎千代様、私は全て受け入れさせていただきます」
「様はいらぬ。これは偶然ではなく必然じゃ。もはや最初から決められていた運命である」
「で、ありますよね。それでは虎千代、私と共にこれからの人生を共に歩んで頂けますか」
「言わずもがなじゃ。妾の相手は其方以外には務まらぬことをわかっているくせに、意地の悪い御仁じゃ」
強く強行的かと思われながらこのデレる態度に茶筅丸はやられてしまった。
絶世の美女であり、ツンデレ要素のあるこの虎千代が愛おしくてしかたないのである。
上杉輝虎が名古屋城に来て早々祝言とはならなかったが、夜這いと言うか清酒に酔った虎千代に茶筅丸が押し倒される形で初夜を過ごした。
虎千代も、茶筅丸も魂と言うか五臓六腑と言うか全身幸せに満たされる形で幸せを噛み締めて眠りについた。
朝方目が覚めた両名は無意識に接吻をかわしお互いに「「心から愛してる」」と愛の言葉をかわす。
目が覚めた2人は冷たい井戸水で顔を洗うと馬で朝駆けに出かける。
海辺を茶筅丸の愛馬の黒馬と、虎千代の為に用意さた白馬で駆けるが虎千代は違和感を受ける。
「婿殿、この馬は何かおかしい。通常の馬より速すぎるぞ」
「フフフフフ、流石は虎千代気づきましたか。これらの馬には蹄鉄と言う馬の蹄を保護するものが取り付けられているのです。これにより騎馬は今まで以上の力を出すことが可能となります。後で現物をおみせして説明致しますね」
涼しい顔をして説明する織田茶筅丸であるが、虎千代は驚愕していた。
この蹄鉄を正式採用すれば騎馬隊の強さが変わってくるし、情報伝達の速度も変わってくる。
そして奇襲攻撃ではないが、これまで以上の速度と安定感を騎馬が維持できればもはや武田の騎馬隊を圧倒できる存在になることも夢ではないのだから。
「この秘術を簡単に我等にあかして良いのか婿殿」
「虎千代、見損なわないで下さい。共にまぐわい夫婦の契りを結んだ以上何を隠し立てする必要がありましょうか。もはや尾張国だけでなく越後国も守るべき愛する国なのです。私は尾張国も越後国も守り発展の手助けをしたいと考えていますよ」
茶筅丸の言葉に虎千代は感極まり瞳に涙を浮かべながらも耐えて嬉しそうに微笑む。
この名古屋城と名古屋城下の発展を実際にみて、今後発展するであろう春日山城下が楽に想像できたのだから。
「心強いな。流石は妾が見込んだ婿殿だ」
「フフフフフ。虎千代を失望させないよう精進致します」
「ああ、期待している」
茶筅丸は元服前の為、上杉輝虎は婿殿と呼ぶが早く元服して真名で呼ばれたいと心から思うのであった。




