軒猿
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長き旅路の果てに虎千代一行は遂に名古屋城下まで辿り着いたのであったが、名古屋城と城下町の規模に虎千代を筆頭に一行は舌をまいた。
以前上洛した際の京の都の何倍もの規模ではないかと悟ってしまったのである。
虎千代達はこれほどまでの城の縄張りと城下町の規模はみたこともなかった。
「なんじゃここは、まるで天竺のようじゃ。妾は違う意味で目眩がしてきたぞ」
「虎千代様のお言葉に間違いはありません。ここは異常にございます」
京の都やこれまで旅して来た城下町を知る虎千代達にとってその何倍にも栄えた名古屋城下を異常と考えるのは仕方のないことである。
織田茶筅丸が懇意にする天王寺屋は今や頭一つ抜けた日の本一の大商人であり、本店の堺以上に力を入れる名古屋城下の店は名古屋城下でも商売における1番の好立地に建つ為、もはや日の本一であった。
望みさえすれば余程問題が無い限り織田茶筅丸はどの様な者達にも出店を許したが、やはり以前の初動と城下町発展の為の寄付を1番惜しまぬ天王寺屋は強い。
虎千代達一行は城下町の活気と、どのような物であろうと望めば手に入るであろう店の品揃えに驚くばかりである。
食事処も多数あり賑わっているが、織田家直営店と言うものがあったので虎千代達は入ってみることにした。
うどん、蕎麦を麺状に整えて出汁と醤油なる物で味付けをした物も人気のようだが、織田茶筅丸様一押し支那そばと言うものに興味を覚えて皆でそれを注文した。
ここで言う支那そばは醤油ラーメンのことであり、鶏ガラと煮干し、昆布などからとったスープに醤油を合わせて、かんすいを使わない無加水卵麺に盛り付けとして猪の肉で作った焼豚に煮卵、葱、白身魚の練り物で作ったなるとを乗せてある。
唐辛子を使う辛い支那そばも一部の者達から莫大な人気をはくしているらしい。
虎千代は辛い支那そばを食したが、初めて食べるその美味さに箸が止まらず、辛味から汗も止まらなかった。
「美味い、美味すぎる」
令和の日本式のラーメンが大好きなのは全国共通であり、虎千代に振り回されて同行させられた家臣達も何か報われた気持ちになった。
「与六、美味いのう」
「はい、長親様。私はこのような美味いものは食べたことがありません。辛い旅路を耐えたかいがございました」
「うむ、うむ。わかる.わかるぞ与六よ。地獄に仏とは正にこのことじゃ。五臓六腑に染み渡る美味さだ」
「やはり虎千代様の仰ることが正しかったのですね」
「うむ、信じがたいことだが名古屋城とその城下、見たことのない物や食べたことのないご馳走を食べさせられては認めるしかなかろう。虎千代様が全て正しかったと」
名古屋城本丸
俺はかつてない神威と覇気を感じることにより最近の夢見や異変の数々に関して納得していた。
このような神威と覇気を放てる者などあの御仁をおいて他にいないのだから。
今の段階で俺の住む尾張国の名古屋城までくると言うことは俺を生涯の伴侶として望み品定めに来たのであろうか。
しかし尊敬して敬愛するあの方であるならば、歴史的な功績からの印象と某海賊女帝と宇宙世紀の某女指導者を足して割った印象なので色々と油断が出来ない。
ただ彼女達に共通するのは、敵対する者達にとっては恐ろし過ぎる存在であるが、愛した者には一途に尽くす可愛らしい点である。
だからこそ俺は目を閉じて考え全てにおいての覚悟を決めた。
遠きかの地よりわざわざ自分の為に出向いてくれたのであれば全て受け入れて責任を取ろうと。
俺の前に服部半蔵が現れ名古屋城下に表向きは旅芸人一座が入ったこと報告した。
そしてそれらを陰から護衛する者達とお互い距離を保ちながら牽制しあっていることも。
「半蔵、主だった家臣を全て城に集めろ。出迎える準備を致すぞ」
「御意に。しかし若様、せん越ながらかのもの達の正体をご存知で」
「ああ、相手は父上がこの世で1番恐れている御仁だ」
俺の答えに普段冷静頓着な服部半蔵が汗をだらだらながしながら「まさか…ありえん…軍神…」とかぶつぶつ言っている。
そう服部半蔵とその配下の者達が対峙して牽制しあっている者達の正体はこの時代最強候補の一角である軒猿の頭である風華とその部下達であったのである。
軒猿は男女様々な組に別れているが、海外の騎士団に例えると、風華率いる100人を超えるくノ一は近衛騎士団のごとく親衛隊である。
そして軒猿の頭である風華は今まで様々な手柄を立てており、その手柄により主君より長尾の苗字を名乗ることを許されているのだ。
軒猿の組織全体の頭である長尾風華は、最強忍者と名高い服部半蔵をもくらくらさせるほどの妖艶な美貌も持ち合わせていた。
そして俺の指示を受けた服部半蔵とのやりとりの末にお互い警戒をとくのである。
そして虎千代一行は真っ直ぐに名古屋城を目指すのであった。




