迫り来る龍虎
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名古屋城
俺は理由はわからないがここ数日金縛りにあい、心身共に疲れ果てたからか寝込んでいた。
何か蛇と言うか龍に全身を締め上げられるような夢をみるのである。
俺を心配した家臣達は俺を元気つけようと権六は川で天然の鰻を捕まえて献上しており、服部半蔵は天然の自然薯を、滝川忍軍の知識なのか葵からはマムシの心臓と生き血を、その他の家臣達も俺の身体に良さそうな物ばかりを差し入れしてくれていたので身体が疼いた。
そして誰よりも成長が早かったその身体は子孫を残せるような状態まで成熟していたので確かに滋養強壮に良さそうだがと思いながら俺は瞑想する。
食べ物の好き嫌いがあまりない俺だが、葵が持ってきた物があまりに生臭く不味かったので「これはなんだ?」と聞くと「蝮の心臓と生き血ですよ。身体に力がつくんです。蝮の身は私のおやつなんであげませんよ」とすまして言うのでひっくり返りそうになった。
そして蝮の身に関しては心底「いらんわ」と叫びいくら忍びと言えども本当にそれを食べるのかと俺は顔を引き攣らせる。
蛇皮は加工して色々使えるらしく葵は丁寧に皮をはいでいる。
そして蝮の毒は吹き矢やその他の武器に塗り暗殺用に使えると鼻歌を歌っている。
俺は蛇の怖さを感じながら葵に「蝮はどうやって捕まえたのだ?」と訊ねると使役獣の黒猫のギギ丸に捕まえさせたとのこと。
俺の中の猫のイメージはスコティッシュフォールドのような顔が丸くて人懐っこい印象だが、鼠を駆除し蛇や鳥、虫などを捕まえる猫はとんでもない益獣なのではと俺は見直す。
どこからかすっと現れて葵の肩にのるギギ丸は赤い布を首にりぼんのように結んでおり、俺の心が読めるのか尻尾をぴーんと立てて得意顔をしている。
そして葵まで鼻をぴーんと立てて得意顔をしていたので何故か無償に苛立ちを覚えて、でこぴんをくらわせるのであった。
美濃国岐阜城 織田信長目線
ここ数日織田信長は、龍や虎に睨み付けられ爪や牙を立てられる悪夢を見て朝方背中に汗をぐっしょりとかいて目覚める。
「不吉な、よもや甲斐武田信玄でも攻めてくる訳ではなかろうな」
武田信玄の通り名は甲斐の虎であり、信長は武田信玄に苦手意識を持っている。
「お館様、申し上げます」
「なんじゃ五郎左衛門」
「今岐阜城下に旅芸人の一座が来ており、そのうちの1人が絶世の美女とのこと」
「で、あるか」
「ただ不思議な雰囲気を纏っており、まるで龍のごとく神威を感じるとか」
「その者の名はわかるか」
「虎千代と名乗っているようでござる」
その言葉を聞いた信長は無意識の内に全身から嫌な汗が吹き出す。
「その者達を城に招かれますか」
「いや、いい。龍も虎もみとうない。噛みつかれるのは蝮の娘で間に合っておる」
「ハハッ。承知いたしました」
戦国時代において直感はとても大事であり信長はこの直感に優れていた。
旅芸人目線
「ほう、織田信長は我等を城に召し上げなかったか。勘のいい奴め。その面拝んでやろうと思っていたが後の楽しみといたそうか。フフフフフ、アッハッハッハ」
「それは虎千代様が岐阜城下に入られてから神威、覇気を放たれたからでは?直感の良い者なら気付くでしょうし、初見でなんともないのは同じ神威、覇気を持つものか、能力が低く感じることが出来ぬ阿呆だけでありましょう」
「アッハッハッハ。そうじゃな、あの織田信長は神威は持たぬが覇気は持っているようじゃ」
「そう何人も神威を持つ者がいてたまりますか。虎千代様と婿殿くらいでございましょう」
「そう言うことになるかのう」
「しかし通り名が龍で本名が虎などとそんな物騒な名前の女子は世界中探しても虎千代様だけでございますぞ」
「ふん、妾に対してそのような減らず口を叩けるのはお主くらいじゃぞ長親よ」
「おお、怖い、怖い。虎千代様が無理難題を申すから虎千代様の影武者をたて、暫くの国内統治の道筋を付けて、女装までさせられてこうして同行していると言うのに…よ、よ、よ、よ」
「よ、よ、よ、よ、よ」
「我らを見て真似て学べとは言ったが嘘泣きは真似しなくてもよい」
与六の頭にごちんと拳骨が落ちる。
「虎千代様、今夜は佐久間信盛の屋敷に招かれておりまする」
「得体のしれない者達を武家が邸に招くなど武田信玄のようになんでも食う野獣のような者達か、愚か者のすることよ」
「まったく同感ですな。屋敷には林佐渡など重臣(旧臣)達が集まっているらしいですぞ」
「ふん、俗物が」
案の定佐久間信盛や林佐渡等重臣(旧臣)達は鼻の下を伸ばし酒をあおるのであった。
翌日夜這いをかけようとしたのか佐久間信盛や林佐渡達はあられのない姿で庭に転がっていたと言う。
「フフフフフ、あと少しじゃな婿殿まっておれよ」
その朝茶筅丸は急に悪寒を感じで風呂に駆け込んだとかそうでないとか。




