御庭番
いつも誤字脱字修正ありがとうございます。
私の名は滝川葵、肌は雪よりも白く、目は切れ長で美人の条件を満たしていると自他共に認めている。
私は産まれた後すぐに才能ありと見込まれ滝川流忍術を学ばされることになる。
現在は私を頭とした名古屋滝川忍軍は主君である織田茶筅丸様に御庭番の役割と権限を与えられており他の忍者衆達と連携をとりながら名古屋城の警護に勤めている。
私の住処は名古屋城本丸茶筅丸様の部屋の屋根裏であり、最近はその床下に伊賀者が潜んでいるのを私は知っている。
屋根裏の私の住処はそれなりに整えられており住みこごちは悪くないが、真冬の寒い時はこっそりと茶筅丸様の布団に忍び込んでいるのはお忍びだけに内緒である。
しかし名古屋城において私は人知れず貢献していることがある。
私の自慢の陸・海・空な使役獣のうちどのような狭い場所も通り抜けられる黒猫のギギ丸が名古屋城内の鼠を狩っているのだから。
茶筅丸様は優しいお方だ。城下町で無実の罪で盗人扱いされた孤児を私が庇った際に殴られそうになった私を町民に変装して視察をしていた茶筅丸様が前にでて代わりに殴られたのである。
頭に血が上った私はその男を始末しようと考えたが周囲の目を気にして使役する空の獣たるひろ丸に簡易な手紙を託す。
ひろ丸は葵が卵から育てた大鷹で珍しい全身純白でありその飛行速度は稲妻のごとく通常の大鷹を遥かに凌ぐ。
名古屋城下の某所で手紙を受け取った主は怒りで打ち震え馬に飛び乗る。
「フンゴー!フンゴー!許さんぞ!許さんぞ!よくも茶筅丸様に!フンゴー!」
殴られ倒れた茶筅丸様を庇うように私は立ち塞がるが「儂等は佐久間信盛様の家臣じゃ!下賎な者達が逆らってはならぬ高貴な者である」と私を足蹴にする。
織田家の重臣である佐久間信盛の家臣と揉めるのは茶筅丸様の為にもならない。
しかし私は万事休すと諦めことをおこそうと覚悟して敵を睨む。
だが遠くから馬の足音が近づいて来たかと思うと「フンゴー!フンゴー!」と言う柴田様の大声で全てが白紙となった。
次の瞬間柴田様の刀が賊の首の前に突きつけられていたのである。
茶筅丸様は柴田様のその行動に大変驚かれていたが、柴田様に大変感謝して褒美として清酒を授けたようである。
柴田勝家目線
儂が心より忠誠を誓う茶筅丸様が佐久間信盛の配下による狼藉で怪我をおったことを滝川一益の娘である滝川葵に知らされるなり儂はすぐに馬に飛び乗った。
そして現場に駆けつけた際にあきらかに危害を加えられたであろう茶筅丸様と滝川葵の姿を見て儂は激昂した。
「フンゴー!フンゴー!」儂の叫び声はあの信長様に日本一馬鹿でかいと言われるほどであり、並大抵の者達は萎縮して縮み上がってしまう。
「無礼者!儂らはあの佐久間信盛様の家来であるぞ!図が高い下郎が!」
膝をがくがくと震わせながら佐久間信盛の家来どもが声を縛り出して叫ぶ。
「それがどうしたこの小童どもが。丸に二つ雁金の紋を知らぬとは嘆かわしい。佐久間信盛がどうした!儂は柴田勝家じゃ!この鬼柴田を知らぬとは言わせぬぞ」
それを聞いた佐久間信盛の家来達は顔面蒼白になり中には失禁してしまう者もでるほどである。
「幼い者を虐げるその所業!織田家に使えるものとして恥をしれい」
「そしてここにおられる方をどなたと心得る!恐れ多くも熱田大神の加護を受けし織田茶筅丸様でおらされるぞ!者ども頭が高い!控えおろう!」
「「「「「ハハーッ」」」」」
「権六よ助かったぞ。しかし今はお忍びである為、大事にはしたくない。しかし佐久間信盛の家来への教育がなっていないのは見ての通りだ。万事権六に始末は任せる。頼んだぞ」
「茶筅丸様万事この権六にお任せあれ。それ相応の報いは受けさせて見せまする」
この事件は後に父信長の耳にも入ることになるが、父信長は激昂した後に「是非に及ばず」とドスの効いた低い声で呟いたと言う。
この件に関しては現状で織田家からの佐久間信盛へのお咎めはなかったが、柴田勝家からの佐久間信盛への尋常ならぬ圧があったと言う。
お市の方への愛でもわかるように、柴田勝家は誰よりも純粋で真っ直ぐなのである。
自身が敬愛する織田茶筅丸が殴られたことを許すはずもなかったのである。
現時点では序列において柴田勝家より上の立場にいる佐久間信盛であるが後で泣きをみるのは間違いない。
その佐久間信盛であるが反省するどころかあの忌々しい織田家の次男坊風情がと怒り狂っているのを服部半蔵の報告により俺は知っている。
「半蔵よそれはまことか?呆れ過ぎて言葉がないのだが」
「残念ながら全て事実でござる。かの者達は自分達は大切なれど織田家への忠誠心は皆無でござる」
「で、あるか」
父信長が歴史上追放したりした武将達には理由があり、父信長も苦労させられていたことを悟った俺なのであった。
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