水軍の暗躍
あたりが寝静まった頃名古屋港に集結する村上水軍にはとある役割があった。
人々が寝静まった頃夜陰に紛れて周辺国の船の拿捕、名古屋城改修の為の木材や石材の確保運搬である。
石材確保に大いに役立っているのは俺が開発させたシャベルとつるはしである。
ご存知の通りシャベルやつるはしは土木作業に役立つだけではなく立派な武器となる。
先を尖らせて作ったシャベルは斬る、突く、叩くができ矢弾を防ぐこともできる。
また戦地での塹壕や土嚢などの弾除けを作ることができるなどかなり優秀である。
中でも凶悪なのはつるはしで盾や鎧ごと貫いて敵を攻撃でき、城門や城壁の破壊などにも使えるが、村上通康いわく海戦の際に敵の船底に穴を開け沈めるのに丁度良いらしい。
尾張村上水軍の全船に1つつるはしを搭載して船内で1番腕力がある者に使わせてるらしい。
ただ海上での戦闘では赤錆が天敵な為、開発が着々と進んでいる高炉を利用して黒錆を発生させて錆びにくい加工を施したり、メッキの研究、原始的な油の塗布などを行っている。
実験的に防錆処理をしたつるはしは小早船の碇としても実験的に使用を許可した。
いずれ令和の地図で言う秋田や新潟方面まで進出することが出来れば油田を探してそれを原料とした、ペンキ等塗料の作成を行い錆止め剤として使いたいと思うが今はそこまで余裕がないのが残念だ。
また電解メッキなどを試したいので風車や水車を利用して電気を使えるようにしたいと試験的にそれらを建造している。
最終的には蒸気でタービンを回す火力発電まで到達させたいが、流石にすぐにできるものではない。
村上水軍と行動を供にする忍者達から、敵船の船底に水中より簡単に穴を開ける方法はないものかと相談されたので俺は手動でハンドルをまわし突き抜くドリルを提案作成した。
大型船はともかく、開発した大小のドリルは小、中型船の船底に穴を空けるいやらしい兵器として恐れられることになっていく。
村上水軍や滝川忍軍などの忍者衆はこれらの者達を総じて鋸鮫部隊と呼んだ。
また物資の運搬には同じく開発したネコ車が活躍しているがゴムがまだ確保できていないのでタイヤの部分は木でできた車輪に木の皮を巻いてみたり、縄を巻いたり、植物の蔓や蔦を使ったりと試行錯誤の最中なのだがそこは仕方ない。
このように夜陰に紛れ、最新の道具を使用した水軍と忍者衆のつてで周辺国から資源を確保させてもらっているが、時として自然の物や廃城や廃墟の材料を確保するだけでなく簡単な砦や石山本願寺に与する寺を襲い解体して材料の確保をする場合もある。
村上水軍の者達は御仏に関して信心深いが、彼等はほとんどが真言宗であり、武装する本願寺や比叡山に関しては慈悲の心は持ち合わせてなかった。
俺としても今後の為に、伊勢長島方面の一向宗の戦力を削ることは今後につながる。
しかしあくまで蟹江城の傅役である滝川一益の役に立ちたいと言う思いだけであり、俺自身は史実で継ぐことになる名家である由緒正しき北畠家の家督に興味はない。
そもそも織田家自体が由緒ある名家とは言い難い家門であり、父信長のように革新を目指す者とすれば本心としては興味なくそれを利用するのは周囲への政治的な主張に過ぎない。
伊勢神宮に関しては未練や興味がないと言えば嘘になるし、熱田神宮とも近しい仲ではあるのだが、熱田大神の加護を受けし神童と呼ばれる俺としては熱田神宮を常に1番に考えたいと思うのだ。
俺が将来的に日の本で進出を狙うのは父信長や織田家が目指す西ではなく、東である。
西に対する父織田信長の覇道はある程度史実通りに進むべきだと考えているのと、家中で悪目立ちをしてこれ以上敵を作りたくないのもあり最小限の助言、干渉にとどめるつもりだ。
無論色々なことに関して俺がどれだけ我慢できるかであるが。
ただ、東は父信長と周辺国との同盟関係もある為、当面は極秘に開発中の大型船が完成ししだい、攻略対象として蝦夷と琉球国に狙いを定めている。
蝦夷は各地に拠点をつくり支配する方法をとり原住民のアイヌ民族とは共存を目指したいと思う。
令和の知識で彼等の文化や風習がわかっている俺が主導すれば可能なはずだ。
ただ令和の地図で函館あたりを拠点とする蠣崎氏とは一戦交えなくてはならない。
アイヌ民族に関しては蠣崎氏や本土との不平等な取り引きを改善して正当な利益を約束して、彼等の土地や神々、風習などに悪意を持って強制や干渉をしない限りは万事上手くいくことは間違いない。
蝦夷地は寒さなど様々な障害もあるが、鉱物や石炭をはじめとする資源や豊富な海産物は魅力である。
俺は蝦夷地を平定した暁には、将来的に戦で戦ったが許すわけにいかず、殺すのは惜しい大名家や家臣達を流刑地に送るという名分で命を救う手段にしたいと思っている。
まあ本土で暮らしてきた者達にとってはそんな俺の真心に気付く余裕もない過酷な地であることは間違いないのだが。




