三日月斧を振るう女武将
挿絵の画像を作成する際には、「Gemini AI」と「AIイラストくん」を使用させて頂きました。
銃声と炸裂音が至る所で鳴り響き、爆発の衝撃が床や壁面を激しく揺らす。
我々の降伏勧告を断固として拒み続けた敵勢力の居城の運命は、今や風前の灯火だった。
「投降者は保護せよ!だが抗戦する者に容赦はするな!」
部下達に号令をかけながら、私こと紀志玲は尚も抵抗を続ける敵兵を薙ぎ払いながら目星を付けた地点へと直走る。
この拠点を落とせば、吉林省は我が中華王朝の国土として復旧する。
我が敬愛なる愛新覚羅紅蘭女王陛下の仁愛なる威徳で民達に幸福をもたらす為にも、反乱分子である紅露共栄軍は一掃せねばならない。
その為にも、敵将を逃す訳にはいかないのだ。
「はあっ!」
得物の三日月斧で衛兵ごと両断した扉から押し入ったのは、狙い通り敵将の座所だった。
「ここまで攻め寄せたか、紀信の末裔の小娘が!」
流暢な北京語だが、スラブ訛りが感じられる。
紅露共栄軍の中でも生粋のマルキストと名高い男だった。
「既に勝負ありだ…投降せよ!」
「縄目の恥辱は受けぬ!此上は戦場で散るまでよ!」
そうして騎槍を携える姿は、敵ながら天晴と言えた。
徹底抗戦を挑むだけあり、敵将は見事な腕前だった。
私の三日月斧を用いた連続攻撃にも、的確に反応している。
「漢人が生意気にも三日月斧を扱いよって!それは我が民族の武器だ!」
「これは私の関公への憧れの証…敢えて関刀にせぬのは、冷艶鋸への遠慮の為だ!」
打ち合いの合間に放たれる挑発の言葉は、私の集中を削ぐ為と知れた。
残る敵兵が座所の出口を固め、火器の照準を私に合わせたのだ。
「紀信の末裔よ、蜂の巣と化せ!かつて項羽に焼き殺された先祖の元へ行くが良い!」
「むっ!」
勝ち誇る敵将を尻目に、私は得物を一振りした。
此方へ飛んでくる銃弾を斧の刃で叩き切り、そのまま向こうへ返してやる。
「おおっ!?」
「ふんっ!」
切札を失い突撃を仕掛ける敵将を切り捨て、私は出口の方に視線を向けた。
骸の群れの中で一人生き残った敵兵が、怯えた顔をして震えている。
「た、頼む!降伏を…」
「駄目だ、もう遅い。」
次の瞬間、奴は穿たれた眉間の銃創から血を吹出して倒れ伏した。
斧で両断した跳弾が何処に飛ぶか、私には分かっていたのだ。
「敵将、討ち取った!」
三日月斧で落とした首級を掲げた私に呼応するかのように、部下達の上げる勝鬨が落城した拠点をどっと揺るがしたのだ。
我々の北伐は、確実に成果が上がっている。
民達と女王陛下に笑顔が戻るのも、そう遠い事ではないだろう。