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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

第一王子は見捨てられます

作者: 高月水都

ざまぁよりも酷いオチをしたくてと犯人は証言しており……

――王は支配するものではない。

  王は民を、国を()()()()()()()()

  だからこそ。王は王に相応しい者に預けられる。


  傲慢になるなかれ。

  

  かの方々に認められる存在であるように心がけろ。





「兄上」

 就寝時間でありながら一人でどこか行こうとする兄を見つけて呼び掛ける。


「どこに行くつもりですか? 護衛もつけずに」

 責める声になるのも仕方ないだろう。王族でありながら一人で城を抜け出すなど、自分の立場を理解していないとしか思えない。


 ただでさえ。


「どこだっていいだろ!! 王族だからと言って何でもかんでも決められて、うんざりなんだ」

 舌打ちと共に告げてくるのを聞いて怒りと失望が生まれる。


「だから、()()()の婚約者であるマリカ嬢に冷たく当たるんですか?」

 聞いてますよ。どこかの女性に現を抜かしていると。


「あんな辛気臭い女。()()婚約者だというのが不快なんだ。いやな事を思い出させるな」

 それだけ告げるともう口も聞きたくないと兄は出ていく。


「兄上は誤解している……」

 王族の口伝を父から聞いていたがその時兄も一緒に居たはずなのに。


「――仕方ない」

 覚悟を決めるか。ぽつりと呟いて、部屋に戻る。


 ()()()()に不快に思われる前に動かないと。






 

「マリカ。お前との婚約は破棄する」

 とわたしの婚約者()()である()()()()であるリュミエールが告げる。

 リュミエールの傍には、隣国の留学生であるジェネットさんがピタッとくっついている。


 卒業も間近に迫って、社交界デビューをしていない方々や身分で話しかけられない立場の方がと交流を深められるようにと――後、時折現れるとある方々が楽しまれるように行われる交流会でその事件が起きた。


「お前は留学生のジェネットが困っている時に手を貸さずにより事態が酷くなるように仕向けたな。お前の行いはいじめだけではなく、国交も危険にする行いだ」

 リュミエールの傍には宰相の次男と将軍の長男。あと、商会の跡取り。


 というかこの方々は何を言っているのだろうか。

 婚約破棄と言われても……。


「いじめなどと……この国での暗黙の了解を伝えただけです」

「はっ。暗黙の了解? 中庭に置かれている石像に頭を下げろとか。くだらない」

 鼻で笑う様を見て、

「郷に入れば郷に従え。ジェネット様の故郷ではすべき事はなかったですか? いえ、それよりも、殿下。石像とおっしゃいましたが……」

「はっ。石像を石像と言って何が悪い」

 リュミエールの言葉に一緒に居る宰相の次男たちも頷く。


「そうですか………」

 本当にこの方たちは何を言っているのだろうか。石像などと。


 どうしよう。どこから訂正すればいいのか分からない。


「――マリカ嬢一人でも大丈夫そうかなと思ったけど、こんな方々が国を引っ張っていくのかと思われたら民が嘆くだろうし、()()()()が失望しそうだから話に加わってもいいだろうか」

 と突然声を掛けられる。


「なっ……!?」

「キリアン殿下?」

 第二王子であるキリアンが人込みから現れて声を掛けてくる。


「何でお前が!?」

「何でって……交流会は学年問わず、時折、学園に遊びに来る()()()()()が見えると昔から聞いているでしょう」

「とある方々? 父う……陛下だろう」

 何を言っているのかと告げてくる声に。


「陛下が見えるかもしれない行事でこのような行いをしたんだね」

 呆れたようなキリアンの声。


「そっ、それは……この女の行いが国家間の交流に瑕疵を付けるからで」

 最初はしどろもどろだったが、すぐに大義名分を思い出したようにはっきりと断言している。


「そうだ!! この件をきっかけに関係が悪化したら」

「それよりも優先しないといけない事を忘れているようですね。兄上」

 全く困ったものだと頭を抑えるキリアンに。


「――とりあえず。言いたい事はたくさんありますが」

 マリカは交流会に来ている方々にそっと視線を向ける。リュミエールの行いに眉を顰めている方々が多くいるし、実はお忍びで見えていたお方はずっと()()()()()の様子を窺っている。


 で、その方の片方は楽しげに笑っていてもう片方はそんな笑っている方を叱っているのが見える。


「婚約破棄でしたか? 了承します」

 視線をそっとあの方々の方に向けると構わないと頷かれたので了承する。


 キリアンもそちらの方向に視線を向けてかの方々の意思を確認する。


「当然だな。お前のような態度は」

「では、ここでキリアン殿下が正式な王位継承者になられた事を宣言します」

 と声高らかに宣言する。


「なっ⁉」

 どういう事だと状況を全く分かっていないで喚いているリュミエールとその傍の方々を見て。


「誤解をなさっているようなので説明しますが、この国の王は創世の頃から()()()()に選ばれて、王に相応しいと思われたから王になります。で、私は王太子妃。未来の王妃として()()()()()()()()()()

 とそこまで告げると同時に、

「――その通りだ」

 とタイミングを見計らって現れた陛下と。


(ああ、表に出てきましたか)

 と()()()()()()現れる騎士と侍女の格好をしている二人組。


「なんだお前らっ!! 父上に対してなんて狼藉をっ!!」

「狼藉者はお前だっ!!」

 どこか寂しげに、それでいてすべき事をなすために陛下は口を開く。


「いつか改心してくれるかと思ったが無駄だったようだな」

「――まあ、仕方ないだろう。当たり前に享受する事に慣れたら堕落する」

「だからこそ戒めに石像を残したんだけどね」

 騎士と侍女が告げると同時に光輝き、見た事もない煌びやかな衣装に変化させる。


 それは創世神話で見た事ある男神と女神の正装。

 この国の神々の姿。


「なっ、なっ、なっ……」

 その姿を認めて皆跪く。跪かないのはリュミエールとジェネットのみ。


 偽物だと偽りだと言いたかったが、言えるはずがない。圧倒的な威圧感。

 

「あの石像はかつてやらかした人間を懲らしめるために石像にしたんだよね」

「かつての事を忘れるなという教訓だったがな」

 そういえば、あの石像は何かを恐れるような姿をしていた。それが不気味で何であんな不気味な像に頭を下げるのか理解できなかった。


 だが、それが理解できた。理解できてしまった。


 それは――。

「石像にしても効果なかったから生かしておこうか」

「ああ。そうだな。心の奥底から改心するまで死ねないようにしよう」

 二柱が微笑むと共に何かが行われる。


「だから言ったのですが」

 マリカはそっと呟く。


 マリカは王太子妃になるために神直々に育てられた。マリカと結婚する者が王になる。


 だが、リュミエールは自分が王になると勘違いしてこのような暴挙に出た。

 




「王は王に相応しい者に預けられる」

 けして、傲慢になるなと。

裏設定

神になる前の私は乙女ゲームをよくやっていた。身分の低い娘が身分の高い男性に見初められてのシンデレラストーリー。でも、実際に思うとこの後の国が心配だ。

いくら悠久の平和を作れるようにと神が道を定めても人は簡単に道を踏み外す。


だからこそ何か対策はないかと話をしていたら私の対が提案した。


ならば、そっちゅう人間の世界で遊べばいいだろう。人間でいう有給休暇のような感じでさ。


そうやって遊びに来て、その都度何か事件が起きるからもはやこの休暇はお忍びでの内部調査かなと思う。

そう呟くと相方は笑って。


「前世の社畜の癖が抜けないねお互いに」

 と告げるのだった。

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