一切れのクリスマスケーキ
昔絵本の表紙を指差してお母さんに聞いた。白い三角に黄色い縞々、赤い点。それがお皿に乗っている。これは何って?これはクリスマスケーキ、この絵本に書かれている大きさならきっと100人はお腹いっぱいになるよ。と笑った。でも私は言ったの。私なら一人で食べたい。するとお母さんは言いました。みんなで分け合って食べなさい。
何度にもわたる滅亡の危機を乗り越えて人類は皆少食になった。スプーンいっぱいの水で乾きを潤して、100gの食事で1日お腹いっぱいになる。人類が食料を必要としなくなったから農地や牛や豚、鶏を飼うための土地も必要じゃなくなって自然環境が良くなったと歴史の教科書に書かれている。しかし何事にも例外がある。
仕事が終わり、家に帰える。
食事の準備をする。ミールキットの箱の封を切る。全部の重さは1キログラム、中身は照り焼きの骨付き肉、サラダ、サンドイッチ。そしてクリスマスケーキ。
私の胃袋及びエネルギー消費量は旧人類の物だ。大食いは環境に悪い者だ。今日はそれが許される日、数少ないお腹いっぱい食べられる日の一つ、クリスマスだ。何よりこの日しか食べられないものがある。
クリスマスケーキ。社会にたくさん貢献したものにしか送られない。今日のために私はいっぱい働いて、ボランティアをしたのだ。
クリスマスケーキの蓋をあげる。
ふわりと甘い匂いが広がる。そこには絵本で見た白い三角の上に赤い点が乗っていた。今ならわかる白いのは生クリーム、赤いのはイチゴ、きっと下にあるのは黄色い縞々に描かれていたスポンジケーキだろう。
テーブルにミールキットの中身を全部乗せる。そして何より先にフォークをクリスマスケーキに突き立てた。