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真央の初めて

「何もなくて悪いな」


そう言って真央を家家の中へと招き入れ、ソファに落ち着いたところで漸く安堵の息を吐く。


断られなくてよかった。


軽く見えるように誘ったが、内心真央の反応が怖かったのだ。





俺は家へと誘ったら真央がどんな反応をするのか全く予想ができなかった。

急すぎて俊介に嫌われるのではないか、まだそこまでの仲ではないと嫌がられないかと、とても不安だった。


しかし真央は、さらに俺の予想を超えた反応を見せ、最後。


「じゃあ初めて同士?」


だ。


かっわ!! 超可愛いっ!! そしてエロっ!!


鼻血の気配を察して手で押さえようとしたが、それは完全に不審だと気合いで鼻血を抑えた。



真央の言い方がとても卑猥に聞こえた。

それに加え少し赤く染まる頬。

さらには上目遣い。


これを好きな子に見せられて煩悩が浮かばない男なんていないだろう。


滅多に染まらない俺の頬まで少し赤くなった気がする。







家には昼飯にできるような物は一つもないため、ハンバーガーを買って店内で食べていくことにした。


「オレ好きでよく来るんだよね」

「へぇ、好きなのか」

「うん、好き」


主語抜きで好きだけを言うのはずるくないだろうか。

俺のことを言っているのだと思いたくなる。


「特にダブルチーズ」

「俺はてりやきをよく食べるな」


真央はダブルチーズバーガーとポテト、白ブドウジュースを頼んでた。

俺はテリヤキ三個、ポテト、コーラにした。


「三個も入るの?」

「余裕」

「うへぇ。めっちゃ納得の量だけど、オレは絶対入んない量だから、一応の…………確認?」

「なんではてなマークなんだよ。真央は炭酸じゃないのな」

「いや、炭酸好きだけど、オレお腹弱いんだよね。コップ一杯ならともかくこの量ならちょっと経ったらお腹痛くなってトイレに籠る」


腹をさすりながら眉を下げて話す真央がとても可愛い。


いつもなら眉を顰める周りの雑音が真央と話していると全く気にならなかった。







二人で一緒に昼飯を食べた後そのまま一緒に俺の家で過ごすなんて、幸せすぎる。


「映画見るならハンバーガー、テイクアウトにしとけばよかったな」

「はっ! たしかに」


くっそうと悪態を吐きながら俺に頭を預けてくる真央。


今くそ幸せだわ。


天を仰ごうとしたが、仰いだら真央が視界から外れると我慢した。




しかも真央のさっきの言葉は俺の胸に刺さった。


「沢山遊ぼう。寂しいだなんてちっとも、絶対、思わせないから! めっちゃくちゃ賑やかに! …………はムリかも。でも頑張る。それに鬱陶しいって言われるくらいひっつくから!」


俺のようなガラの悪い不良に、こんなに純粋な言葉をくれるヤツが他にいるだろうか。


例えいたとして、真央と同じ言葉を俺に囁いたとて胸にはかすりもしないだろう。

不良だということに怯えながらも俺を助けてくれた真央が言うことだからこそ、信じられるのだ。



あと惚れた奴に言われるからこそ、なんだろう。

他の奴なら聞き流すし、しっかり耳に入ったとて鼻で笑って終わりだ。


「毎日?」

「毎日!」


俺はにやりと笑う。


「それは頼もしいな」


言質は取った。



真央、毎日俺の側にいて。


それだけで俺は、とても幸せに、楽しく過ごせるのだから。



もし真央が俺から離れることになれば、外聞も恥も全てを捨て、泣いて縋って懇願するだろう。


そうなると真央は俺を捨てきれないということもわかってる。

それでもいいから、そう思ってしまう。

まあ、そうならないように努力するのみだが。








真央はホラーが苦手そうだと思い、反応が見たいと態とホラーと言った。

そしたら真央が了承するから、意外にもホラーが得意なのかと思ったのに、得意どころか大の苦手なのだとすぐに分かった。


少しホラーが入るだけで肩をびくつかせ、無意識に俺のズボンや手をぎゅうぎゅうと握るのだ。

そんな行動で小動物が思い浮かぶ。

ずっと愛でていられる。


また、真央は本格的な場面になると目を瞑るのに、結局音声で気になるのかそっと目を開ける。

そしてやっぱり怖くて目を閉じる。

そんな無限ループに陥っている姿が、とても阿呆で愛おしい。



結局映画は一本見た。


「面白かった?」

「映画より真央のリアクションの方が面白かった」


面白いより可愛いの方が怒るかと思って一応の配慮をした。

それでも真央は納得のいかないという顔をしたが。



そんな真央を見て俺は誤魔化すように告げる。


「苦手なら言ってくれればよかったのに」


バツが悪そうに、でも堂々と。


「でも楽しませるって宣言しちゃったから」


なぁ真央、お前どれだけ俺を惚れさせたら気が済むんだよ。


真央がいるのなら、この殺風景な部屋で、なにもしないでいても絶対に楽しい。


そんなことを言ったって困らせるだけだと分かっているなら言わないけど。




映画一本見る間、何も飲んでいなかったから喉が渇いた。


「水取ってくる」


水を取りに行こうとソファを立ち、歩いて行くと、真央が雛鳥のように俺の後をついてきた。


「どした?」

「んー? なんとなく」


理由は特にないらしい。


何となくで引っ付いてくるのが雛鳥みたいで愛らしい。



そんなことを考えながら無駄に大きい冷蔵庫を開く。


ひょっこりと俺の後ろから覗き込んだ真央が黙る。

その後、ありえないものを見る目で見られた。


「………………俊介。コンビニ行こう。そんでオレんち行こう」

「おお?」

「なんで水しか入ってないの。固形物はどうしたの!?」

「んなの入れたことねぇな」

「お菓子は!? お菓子も全くキッチンにないけど!?」

「買ってねぇし」


健全な高校生、いや人間としてこれはないとぶつぶつ言われる。


そんなことを言われても、食に興味なんてないのだ。

これまで買う気にもならなかった。




そして真央に押し切られる形で今、コンビニでお菓子とジュースを選んでいる。

因みに俺が初めて真央と会った日、その前に真央が訪れていたコンビニだ。


「オレ的には、こっちの方がパリッとしてて好き。あ、これ。梅味も美味しいよ」


あまり喋ることが得意ではないのに一生懸命話してくれる。


「んじゃ、梅にする」

「うん!」


一瞬だが嬉しそうににやけた表情に不意打ちをつかれる。


可愛い。


俺も少し笑顔になってしまい、コンビニ内の不良どもがさらに騒がしくなってとても鬱陶しい。

というか騒ぐな。

真央がチラチラと不良どもの方を気にしている。


チッ!


舌打ちなんてしたら真央を怖がらせてしまうかもしれないと思い、心の中に留めるが、内心奴らに喝を入れたくて仕方ない。



ジュースもそれぞれ選んでからレジへと向かう。


その途中で不良どもの横を通ることになり、奴らは勢いよく腰を折る。

そんなに必死に頭下げるくらいならオレらの通る道に突っ立つなと言いたい。

しかし真央との時間が少しでも消えてしまうのだと思うと不愉快で、視線でだけ脅す。






「これオレん家ね」


グレーの外壁の一軒家を眺め、本当に真央の家は俺んちからとても近いのだと知る。

真央も近くだと言っていたが、本当に徒歩五分くらいの距離だ。

さらに、バイクだったら瞬殺だ。


これからは頻繁にお互いの家を行き来できるかもしれないと思ったら想像が膨らむ。



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