けんか 山
俺には友人がいたけど、そいつとの間にはわだかまりがあった。
だから、容易に話ができない関係だった。
俺とあいつはけんかしていたから。
そんなだったから、必然的にそれは起こってしまったんだろう。
夏の日に、夏休みの日に、山へ行こうと数週間前に約束していたんだ。
その時はまだ、けんかなんてしてなかったから。
いかなくなるなんて思わなかったんだ。
通っていた学校が、夏休みに入って。カレンダーを見て「あーあ」ってなった。
でも、何か行動しようとか、スケジュールについて確認しようとかは思わなかった。
口をきかなくなった俺は、そいつのことなんて考えないようにして過ごしていたから。
その結果が、あいつの死だった。
あいつはなんで、一人で山へ向かったのだろう。
何で携帯が繋がるのに助けを呼ばなかったんだろう。
あいつが死んだときの情報は誰にも教えてもらえなかった。
だから、あいつが何をどう思っていたか、なんてまるで分らない。
推測すらできない。
けんかなんてしてなければよかった。
そうしていたら、きっと二人で山へ行っていたはずだ。
あいつが一人で死ぬなんてことなかったかもしれないのに。
俺は今日も、そんなことを考えながら布団に入って、眠りについた。
『おまえとけんかしたせいでおれはしんだんだ』
『おまえとの事がショックだったからシンダんだゾ』
『ずっと うら んで や る』
あと何回そんな恨み言を夢の中で聞けばいいのだろうか。