なんか、えぐいやつ来たって。
種族:神
種族個体名:神人
固有名:ゼロス(零)
性別:♂
職業: 魔王・勇者
パラメーター
攻撃力:9999
守備力:9999
俊敏性:9999
etc…
「…?ここは?」
俺は目が覚めるとようわからん場所にいた。
え?いや、まじでどこだよ。
…ってなんか目の前にいかにもめちゃくちゃ強そうな人が殺気放ってこっちみてるんですけど…まあ、30メートルぐらい離れてるんですけどね
「あなた強いですか?」
………しゃべった。いい声してんなぁ~。
ん?てか、今質問されたよね。うん。された。…たぶん。答えた方がいいよな。よし!こたえよう!
「強いと思います。」
言ったぞ!言ってやったぞ!
「そうですか。名前は?」
「ゼロスです。」
「なるほど。じゃあ…」
「…えっ!?」
ちょっと待って!ちょっと待って!話の展開についてけてない!なんで!なんで、こっちに殴りかかってきてるの!?あ~もう!やるしかねぇ!
「殴る。」
うわっ、危な!結構避けるのきついな。
右左上右左下上右右…
1秒間に何発もの打撃をうってくる。
俺はその間避けに徹していた。
すると彼は
「なるほど。当たりませんか。ならば、素早さを上げましょう。」
彼は魔法を使い素早さを上げて再び殴りかかってくる。
感覚的には10倍くらいかな。外した打撃が壁に当たると、壁が弾き飛んでるからだいぶ威力も上がっているのだろう。なら俺も手加減してる場合じゃないな。ちゃんとやろう。
「おらよ!」
俺はこいつの腹を殴りあげた。
飛ぶ。たたき落とす。殴る。蹴りあげる。殴る。たたき落とす。分身。
両サイドから殴る。上下から殴る。前後ろから殴る。俺はスキルの特性上戦えば戦うほど能力が高くなっていく。だから、1秒間に与えるダメージ量はどんどんと高くなっていく。
最初は、相手も防御できていたがどうやら、防御すらも出来なくなっていた。
しかし俺は、拳をとめない。こいつが死んでいようとも、俺に攻撃をしてきたのなら、徹底的に、
潰す
もはや、光の速度を超えた、殴りが彼を襲う。たった1秒間であろうとも、数え切れないほどの、拳が、殴りが、打撃が、彼を攻める。
10分がたった頃、ゼロスは突然攻撃をやめた。
「ふ~ん。まだ生きてたんだ。」
「はぁ、はぁ、はぁ。強いな…ならば次は、武器を使いお前を倒すのみ!」
彼は刀を取り出し構え、そして、こちらに向かってきた。
え?いや、なんで?なぜ刀なら勝てると思ったん?
まあ、いいや、ちゃんとやろ。
そう思い、俺も構えた。しかし、そこには誰もいなかった。
シュッ!
右腕に鋭い痛みが走った。何かと思って見てみると、そこには何も無かった。地面には、自分の腕。
「うぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」
初めての経験だった。神である自分の腕を、切り落とされたのは。しかも、ほかの神々と違い、鍛錬を重ね、勇者と魔王という人の限界職業を2つも獲得していて、さらに、パラメーターもほとんどカンスト状態の俺の腕を、だ。
俺は痛みに悶えながらも左手で、回復を行った。
徐々に腕が生えてきて、そして治る。
「はあ、はあ、はあ、はあ。どうやって、俺の腕を切り落とした?」
そこで、俺は違和感に気づく。
「………?どこだ?どこに行った。なぜあの速度で行動できるのに、回復中に攻撃をしてこなかった…?まさか!上か!」
そこには黒よりも黒く、光すらも飲み込んでしまうのでないかと思うほどの高質量の、太陽のようなものを、手のひらの上に置いた、彼がいた。そして、彼は言う。
「ふっ、これに勝てるものはいない。つまりお前の負けだ。」
そう言って彼は、それを投げた。
「いや、負けんで。」
いや、だって考えてみてよ。確かに俺は、ちゃんとやろうとは思ったけど、別に全力でやろうとは思ってないわけだよ。でね、武器とかも使ってないわけじゃん。だからさ、まだ、負けないよね。でも、ちょいやばいかも。
「ふうぅ。吸って吐く。」
俺は剣を取り出す。
「しくじったら終わり。チャンスは1回だけ。」
構える。
「真ん中の核を潰せば、あれも消えるはず。」
血の巡りを意識する。呼吸を整え、音のない深層意識まで、入り込む。過集中。余計なことは何も考えない。考えるな。意識しろ。全ては1回のみ。
そして俺は、クリアな世界に立つ。
全てのものが、美しく見える。そしてくっきりと見える。
今なら。できる。
音を超え、光すらも超え、その先にある、その速度まで、到達し、黒き太陽を切る。
ついでに彼もやっとく。ザクっと、やっとく。うん。
自由落下していき、地面に着く。俺は、過集中の影響で、まともに立っていられなかった。ドサッ。尻もちを着いた。
パチパチパチ。拍手が聞こえてきたので顔を上げると、そこには無傷の彼が立っていた。
「素晴らしい。神でありながら、傲慢にならず、ここまで強くなるとは。とても素晴らしい。しかし、これほどまでの強大な力を持つ者がいることは、この世界にとって良いことではないんだよ。だからね、殺されても、文句は言わないでね。」
俺はもう、抗う気も、体力も残ってはいなかった。
「もう抗う力も残っていませんか。つまらない。」
彼はそういうと、俺に手をかざしてきた。
俺は力が復活した。
まじか。
「最後に全力で、かかってきなさい。」
「その、傲慢さが、お前の身を滅ぼす。」
構え、瞬きをした瞬間、俺は、東京のど真ん中にいた。
「ここの方が雰囲気がでるでしょう?ここには人はいないから、安心して全力でかかってきてください。」
一瞬戸惑ったが、これなら大丈夫そうだ。全力であいつを潰す!
両者は駆ける。剣と剣がぶつかる。キンっ!と甲高い音が鳴り響く、そして両者は音を置き去りにし出す。
見てえている状態と、音に差が出だす。1秒、2秒とズレが大きくなってゆく。
パキンっ。2人の持っていた刀と剣が折れる。
すぐに彼らは武器を捨て殴り合いへとスタイルを変える。しかし、武器を捨てようとも、依然、音を変えた戦いであることは、変わらない。既にズレは10秒を超えていた。そして、突然、彼らのスピードの上がり具合が、急上昇する。もはや、人であるならば、誰一人として、それを、その戦いを見ることは出来なかった
であろう。既に彼らのいる場所から半径10kmは、荒れ果てた荒地へと姿を変えている。ビルが沢山並んでいた街並みは見る影もなくなっていた。
彼らは一体、何時間戦い続けたのだろうか。
いや、何日かもしれない。もしかしたら、速すぎた戦いは、数分で終わったのかもしれない。
それは、戦っていた彼らですら、分からなかった。
そして、その戦いの場に最後まで立っていたのは、
『ゼロス』
だった。
しかし、その場に立っていたゼロスは、とても老いていた。それは、光すらも置き去りにして、時間という概念の中で戦い続けた代償なのだろうか。はたまた、激しすぎる戦いに、細胞が耐えきれなくなったのだろうか。もしかしたらその両方かもしれない。それは彼自身も、きっと分からないのであろう。『老』は、たとえ神であったとしても、抗えるものでは無い。つまり彼も、あと少しで命の灯火が消えてなくなることを意味する。そんな中、彼は笑っていた。
なんか、えぐいやつ来たって。
読んでくれてありがとうございます。アドバイスございました、ぜひお申し付けください。