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サウダージ1

 白玉だった。

 上新粉を溶いて丸めて、お湯にいれて浮かばす、あの白玉だった。たびたび拵えているのか、それ専用の銀製の打ち抜き台があって、その型に押し込んでは背ぃの低い円筒(まるづつ)を五つづつ拵えている。穴は六つあるのにひとつ少なく拵えていくのは、何か謂れ(いわれ)でもあるのだろうと思った。

 鍋は、ぐつぐつでなく、ほんのり湯気が立っている感じで、そのまま身体を浸かってもよさそうな優しさのあるお湯が張られていた。そこに、ひとつ、ふたつと飛び込んで、しばらくのあと、浮かんだやつのヌルっとしたものから手づのまま口にする。浮かんだときの白い滑らかな光沢が、そのまま弾力と混じって、ほかの甘みを加えなくとも甘露を感じた。


 急に笑顔をつくった赤ん坊の頬っぺみたいに、ひとさし指でつんつんしたくなる。

 あーこんな感じだったなと、思い出が蘇った。自分の子に自分のひとさし指をくっつけた記憶よりも、まだとろんとしてる湿った温かな記憶の中のあの頃の、まわりの大人たちの誰からも、ひとさし指でつんつんされていた幸せな幼い時分に引き戻されてしまいそうだ。


 明の皇帝が愛した「明成化闘彩鶏缸杯」、通称チキンカップ。いまだ触れたことがないのに、あの磁器の薄く冷たい吸い口が柔らかに温かに溶け出す感じが思い出される。


 もう、いけない。

 いつまでも見つめたりしてはいけないのだ。はやくつまんで喰ってしまわぬと、触れてもいない38億円の至高の宝まで目の前にやってきて、このお湯から抜けては出れないものになってしまいそうだ。

 

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