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猪首のおやじの床屋

 今朝は少しだけ残っていた。その尻尾のようなものの先を(つか)んでいたから、書き留めてみる。


 髪の毛が伸びたのだ。襟足から()きあげると太いロープを掴んだような大きなまとまりが居ついてた。「急に、こんなに伸びてしまって」とムラムラしてきて、あとさき考えすぎ床屋に向かった。

 床屋の前に着いたら、あの赤青白のグルグルのサインが懐かしい。しばらくぶりだ。ここ数年あたまはもっぱら妻の掌でやってもらっているので、懐かしく感じる。「わざわざ値上げした5,000円払ってまで、やってもらうような(とし)でもなくなったじゃない」と、収納整理を始めていた妻が、むかし子どもが小学生だったときに使っていた電動バリカンを取り出し、やり始めて、すでに5年が経つ。

 予約をいれず、ただただムラムラのせいにして勇んで店の前まで一直線でやってきたのが、齢が立つごとに性急になる性格(たち)ばかりではないような気がして、別にもたげてきた後ろめたい気分が身体を包んでいる。


 「戻ろうか」と思案した、そのときだった。

 中の方から扉を開けて、おやじがのそりと出てきた。今頃には珍しく、白衣で猪首でむかしの殿山泰司にそっくりの禿げあたまだ。

 ほっとした。

 扉を開けたのが、こうしたシチュエーションの映画に出てくるような、匂いが先に立つクルクル巻きした妙齢の女だったら・・・・・と、安堵した。

 淡々と椅子に載せ、淡々と切った。尻尾のようなものの先だけだから、切られているチョキチョキは覚えてはいない。


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