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この感じに一番近しいのは、耳あかとり

 白くぷっくりしてるが、肉そのものは硬く引きしまってる腹だった。


 硬いと感じたのは、触れたときではなく、腹の中を屠ふる(ほおる)ために開けたあとの、締め直すときだった。首から上と(へそ)から下は暗みがかかっていて見えないが、9才くらいの男の子の真っ直ぐな身体を感じる。

 それでも、全体に猟奇じみた感じは立ち昇ってはこない。

 定期的に掃除をするような、腹を開けて中を屠ふる(ほおる)ために、この仔は此処に来た。通院だから楽しくはないだろうが、そうしたものにひとりでやってきて腹の中を屠ふ(ほお)られるのに慣れてる感じがする。

 

 腹の中の掃除をするのは、わたし一人でだ。

 あらかたを剝ぎ取ったあと、もともと中の色だと思った(へき)を小さな刷毛(はけ)ぼうきで撫でてやると、付着してた残滓(かす)がこそげ落ちて本来の色を取り戻す。

 わたしも、こうしたことに慣れているようだ。

 いまの医者のような白衣を付けた生業(なりわい)ではないが、こうした施しがほかの男の子の身体にも及んでいる感じがする。そのための誰かに付いたり何かを学んだりでなく、こうした定期の繰り返しの中でいつのまにか納めてしまったような実感がする。親を含めた身内でさえ掌を出さなかった施しを、他人のわたしがするようになるまでの経緯の重たさが辺りに横たわっていた。

 

 そんな長々の邂逅(かいこう)が挟まれてくるのは、してることがしてることなので、それが猟奇のおぞましさと無縁なものであると己れを納得したかったんだろう。何かしら(ことわり)が先に立つようになったきたから、(うつつ)は近づいている。だんだんと締め直しが詰まってきて、「これに一番近しいのは、耳垢とりだ」が、スルッと出た。

 出たときに覚めたのだけれど、そのあと二度寝、三度寝しても、長々の邂逅も含めて誰も逃げなかった。だから「これは本当なんだ」と、暫くぶりに書き留めた。

  

 

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