表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
88/231

蛇の鱗をならべた小紋柄

 いつもの古い街とは(おもむき)が異なってた。

 道路は、車両が4台5台並んで走れるように拡い。だから、通りに面し歯こぼれした店の跡も拡い。むかしだったらそこを「あき地」と呼んだゴッこ遊びする小さな男の子たちを幾つも抱えていたんだろうが、仔どもは居ない。

 いつも陰気で暗いのに、むりして首筋に汗を浮かせてるオヤジたちしか居ない。そんなオヤジたちをひとりずつ写したポスターが階下(した)のライブハウスに貼ってある。歯こぼれして空き地ができるくらい拡いのに、むりして間口を狭め急で幅のない階段を造り、首筋の汗をかがせようとする。

 

 腋臭(わきが)でも見てやろうと、階下(した)へ潜った。

 むかしの少年漫画みたいな太っとく輪郭をなぞったポーズも二人(ふたり)いるが、あとの残りは、証明の写真みたいな何処から眺めても当の本人だけ違和感は残るが他の皆んなは「あいつだ」と特定できる飄々(ひょうひょう)だ。ポスターまでしてもらう算段がついたくせに途中から臆病になって通りすがりの冷やかしに腋臭(わきが)を見られるのが嫌なのだろう。


 ポーズを決めていても決めていなくても、ポスターの背景は蛇の鱗をならべた小紋柄だった。

 あとでの合成がかった組み合わせなんかじゃなくて、切り取り線のないちゃんとした撮影スタジオで撮ったものだ。「皆んなでやれば、相場の7掛けまではいかないから」と、ライブハウスの太客(ふときゃく)のオヤジたちに声を掛ける算段が四人が座ればいっぱいのバーカウンターで囁かれたんだろう。

 脂じみめいた汗をかいてる太客(ふときゃく)に混じりひとり汗をかいてない男の残像だけが残っているが、用心深いその男は顔をすっかり消している。


 なにもないバーカウンターに、雑誌がひとつ。

 名前だけは量販店のブックストアーで眺めたことのある表紙なのでめくったら、折り目のついたあたりにオヤジたちがポスターと同じ写真で載っていた。ポップくらいの短いコメントも添えられている。1(ぺーじ)六折り(むつおり)にした区画に、ほかの8頁に収まってる48人に混ざって蛇の鱗をならべた小紋柄をバックに写ってる。きっと、「スタジオ使って、○○ ○に撮ってもらっても、48人で割り勘したらひとり10万は超えないから」にほだされたのだろう。日本中のブックストアに並ぶ雑誌も琴線(きんせん)に効いたんだろう。

 それにしても、この小紋柄どこか見たことあるなぁーって唸っていたら、むかしクルクル巻きにした書初め(かきぞめ)やら賞状やらを入れてた円筒(えんづつ)の柄だったのを思い出し、すっきりと覚めた。

 

 

 

 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ