蛇の鱗をならべた小紋柄
いつもの古い街とは趣が異なってた。
道路は、車両が4台5台並んで走れるように拡い。だから、通りに面し歯こぼれした店の跡も拡い。むかしだったらそこを「あき地」と呼んだゴッこ遊びする小さな男の子たちを幾つも抱えていたんだろうが、仔どもは居ない。
いつも陰気で暗いのに、むりして首筋に汗を浮かせてるオヤジたちしか居ない。そんなオヤジたちをひとりずつ写したポスターが階下のライブハウスに貼ってある。歯こぼれして空き地ができるくらい拡いのに、むりして間口を狭め急で幅のない階段を造り、首筋の汗をかがせようとする。
腋臭でも見てやろうと、階下へ潜った。
むかしの少年漫画みたいな太っとく輪郭をなぞったポーズも二人いるが、あとの残りは、証明の写真みたいな何処から眺めても当の本人だけ違和感は残るが他の皆んなは「あいつだ」と特定できる飄々だ。ポスターまでしてもらう算段がついたくせに途中から臆病になって通りすがりの冷やかしに腋臭を見られるのが嫌なのだろう。
ポーズを決めていても決めていなくても、ポスターの背景は蛇の鱗をならべた小紋柄だった。
あとでの合成がかった組み合わせなんかじゃなくて、切り取り線のないちゃんとした撮影スタジオで撮ったものだ。「皆んなでやれば、相場の7掛けまではいかないから」と、ライブハウスの太客のオヤジたちに声を掛ける算段が四人が座ればいっぱいのバーカウンターで囁かれたんだろう。
脂じみめいた汗をかいてる太客に混じりひとり汗をかいてない男の残像だけが残っているが、用心深いその男は顔をすっかり消している。
なにもないバーカウンターに、雑誌がひとつ。
名前だけは量販店のブックストアーで眺めたことのある表紙なのでめくったら、折り目のついたあたりにオヤジたちがポスターと同じ写真で載っていた。ポップくらいの短いコメントも添えられている。1頁を六折りにした区画に、ほかの8頁に収まってる48人に混ざって蛇の鱗をならべた小紋柄をバックに写ってる。きっと、「スタジオ使って、○○ ○に撮ってもらっても、48人で割り勘したらひとり10万は超えないから」にほだされたのだろう。日本中のブックストアに並ぶ雑誌も琴線に効いたんだろう。
それにしても、この小紋柄どこか見たことあるなぁーって唸っていたら、むかしクルクル巻きにした書初めやら賞状やらを入れてた円筒の柄だったのを思い出し、すっきりと覚めた。




