断面が菊の花した鉄棒で、これから付き合いのイイ女を殺めなければならない
輪切りにしたら中に菊の花の模様の見える鉄棒でこれから女を刺殺しさなければならない。
わたしひとりなら、ためらいがきっとかたちになって出てしまい、やり遂げるのに支障が出てくるのだろうが、似たような男が数人で女を輪で囲み、担っている。
小窓しか開いてない暗がりの部屋に、長い髪を一束に後ろ手に、若い女が縛られていたその明かりが富士額のある瓜実顔にあたり、名前の出てこない薄幸な美人女優を彷彿させた。
わたしらは女も含めて逃れられないようになっていた。
わたしらは、はやくこれを終えようと結束していた。もちろん女が一番にそれを思っている。
わたしでなくてもよいのだが、わたしが持っているからと、妙な立ち止まりはよして女の眉間に切っ先を当てる。それように研いではいるが、もともとこんなことのために拵えたものでないから、「エイっと瞬発の力を籠めれば貫通し、わたしら皆んなを終えようとした場所に連れていくように」と念じたが、そうそううまくはいかない。
出血はしたが、穴を開けた感触までも伝わらぬ。
入り口のままだった鉄棒をいったん引っ込め、息を整え、再び臨む。
「エイっ」
ここには似つかわしくない丸っこい声だったが、それには誰も反応しない。
今度は穴が開いた。
多くの噴き出した鮮血と、鉄棒から伝わる感触で前に進んだ感じがする。しかし、まだまだ出口ではない。
わたしら皆んなは、それが分かってる。
「エイっ」
「やぁー」
「トぉー」
いっぽん調子もどうかと思ったのだろう、そのときどきの気合声が変わる。もちろん、それに誰も反応しない。わたしを除き、皆んな無表情で無言の時が流れる。
それは、女も同様だ。どんなに我慢強くても、ここまでの経験はないのに、罵声も嬌声も発せず、同じように付き合ってくれる。
「付き合って、・・・呉れてる」が浮かんでしまい、その顔から目を背けずにいると、ほんとうに身内のような心根が浮かんでしまう。それを皆んなグッとこらえる。
ここが、踏ん張りどころなのは皆んな承知してるのだ。
なんとか踏ん張りが効いて、なんとか頭蓋骨の先まで貫通することが出来た。穴は硬いものからその先の柔らかなものを攪拌し、わたしらはこれを終わりにすることが出来た。
終わったあと、ひとりが欠けたことに気付いた。その感じが殺めた女への憐憫にならないよう、感謝になるよう再び踏ん張ろうとしたら、覚めた。




