小指の先ほどのこと
杯のやりとりの夢を見た。覚めたのが1時まえだったからそのものは深夜なのだが、このまま寝付けないと悟り2時に二階にあがって書き留め始めたのだから起きがけの部類に入れてもよいだろう。
大広間の宴席だった。わたしは下座の端から2番目の膳に向かい黒っぽい身なりで行儀よく膝を畳んでいる。背中に周ると年寄りくさくかがんだ襟足が青い。散髪仕立ての匂いまでしてきそうだ。本当に若い時分なのだろう、髪質もまだ固い直毛の気がする。かがんでるのは年寄りじみた仕草を模してるのではなく、賑わい始めた上座に視線を向けてているためだ。
頃合いに空いたので、上座の真ん中の安中さんに注ぎにいく。注ぎおわるかどうかのうちに安中さんが手の中に隠していた猪口で返杯をうけた。
ー いよいよだね。
ー いやっ、まぁーなど、伏せたような含んだような相づちを挟んで両手で受けた。多分、昇進のことだろう。あーみえて、今のわたしよりも齢らしい。
それよりも半分飲んだ猪口の底にゴハン粒が小指の先ほどの団子をつくって沈んでいる。それに気がついたら、このあとそのまま飲み干すのかどうかばかりにあたまが向かってしまい、覚めた。