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四つ、句点をうって

 「四つ、句点をうってほしい」という。

 誰という(いとま)をあたえず、それを背中越しに感じて、少し覚めた。夜中に降った雨のせいか、寒さが先にたって、足元に丸まっている薄物(うすもの)をもぞもぞ手繰り寄せ、ダンゴムシのように丸まる。胴体の温かみが手足の先まで延びていって、ついさっき頼まれたのものまで手繰り寄せてしまった。

 句点といってたよなと、ぼんやりの怪しみからその二文字だけを抽出したら、温かみに戻る前に尿意が出てきて、横の妻に気づかれないよう寝所を抜ける。

 寒さのついでの尿意なので、たいしたことはない。そのことを意識する前に終わった。

 小部屋の時計を見ると、まだ3時に満たない。

 

 そこで、ひとつ、打たれた。

 お(こと)を奏でる爪先のような、白く、四角く、硬いものが、打たれた。文章ではない日常生活に打つ句点だから、丸みでない割って突き刺さるようなかたちなのだろうがと思っていた。そして少し笑いたくなるような、例えれば、天童市の定番のお土産品の「王将」と漆で筆書きされた大きな将棋駒のようなデフォルメされた大きさを期待していたから、その機能的な平凡さに肩すかしをくらった。

 それでも、お(こと)を奏でる爪先は、お土産品のデフォルメされた将棋駒の重さがあって、その自重で刺さっていく。


 寝所に戻ると、妻はいない。あー、また、いつもの、夜明け前の散歩に出たかと言い聞かせ、二つ目が刺さる。

 薄物には温もりが残ってる。それを二枚とも合わせ、(くる)まってると、本当に温かな心地になって、もう一度眠れそうな気がする。


 寝返りを打ったら、三つ目が刺さり、妻は戻っていて、薄物の片方はそちらに運ばれている。もともと妻の薄物だから、当たり前なのだが、剝がされても何も気づかず言えない己れが侘しくもあり、不可思議でもあった。

 

 それで、四つ目が出てくるのをジッと待っても、いっこうに出てこない。あんな寝返りみたいな簡単な一挙手一投足で出てくるのだから、ここで撃たなくてどこで撃つのかの自問自答する。それが背中に浮かんだのか、寄ってきた声が、「あなたは、いつも、それだから」と夜を吹き消すように言って、覚めた。 




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