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カボちゃパンツ

 結婚するのか・・・・・

 あお向けに倒れ、痛さよりもそんな間抜けなポーズが不似合いの美人は、しばらく、そのまま、戻ろうとしない。駆け寄らなければ()の届かない距離を挟んで、わたしは立ちつくしている。 

 目を閉じて起立した鼻が美人の表情の真っ先にくる。正確には、その二つの鼻の穴だ。白のインゲン豆をそこに入れたら、さぞかしシュッとした少し長めの紡錘形が際立つだろうと思わせる鼻の穴だ。

 その真四角の間取りと小さな木目のブロックタイルの床板から教室を連想させる舞台の上で、さっと目を開けた美人が「わたし、ちょっと、気絶していた」から始まる不条理劇に、わたしは立ちつくしている。

 

 だから、わたしの方からは何もしない。

 他にひとりしかいない共演者のふりさえしない。

 

 ただ、じっと、まくれ上がったままのスカートから零れ出たパンツを眺めている。

 起立した美しい鼻とお似合いのうすい水色したパンツなのに、前のめりになろうとすると小さな女の子の履いてる厚手の生地が「カボちゃパンツなの」ってアップリケみたいな顔をする。

 だから、その辺りのかたちを彷彿させる隆起は見えない。(てのひら)まで肌合いを届けてはくれない。美人を隠したいくもの野太い声で起き上がったら、不条理劇なんて始まらずにわたしは埋火を元の場所に納め、その間なにもなかったふりをして戻っていくんだろう。


 けれど、戻らない。いつもになんか戻ったりはしない。

 美人は結婚するんだ。

 こんな小学校の教室みたいな余計な何かなんて何ひとつ落ちてない中でふたりっきりなって、目を瞑ったままの美人の鼻の穴に自分勝手な白いインゲン豆を詰めることはできても、リアルなカボちゃパンツに手をかけることは、もう金輪際、出来ないのだ。


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