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五十円玉したアーモンドチョコ

 ふたたび何かの対策本部を立てたからと異動の発令が出て、そちらに送り込まれた。

 やたら長々しい名称で発令の紙を見ないと何の対策本部なのかは分からない。出した方だって何を対策するのか分かっているわけではないからだ。

 集まってきた顔ぶれを見て段々とかたちが見えてくるのはいつものことだ。

 皆んな、しばらくは家に帰れないだろうからと、パンパンのリュックサックでやってくるのもいつものことだ。「こんな所でモタモタなんかしてないで、早くゲンバへいかなくちゃ」の熱い連中は、それ専用の踏まれたら痛そうなゴツい靴を履き、熱にも寒さにも負けない重装備を着込んで臨んでいる。わたしは事務の人なのでいつもの後方支援だろうからと、そんな連中をクールダウンさせるためにリュックサックのポケットに入れておいた百円玉と五十円玉を掴んで、ひとりひとりに「まずは好きな甘いものでも買っておいで」と、階下の売店へ行くように勧める。

 ()ぐに手ずから口に頬張らせてあげられるアメ玉やチョコの(たぐい)でも良かったのだが、どうせしばらくは、だだっ広い大広間に長机だのケーブルだのが持ち込まれ、そうした準備が整うまでは手持ち無沙汰の時間が長く続くのは分かってるから、百円や五十円の玉銭(だません)を握りしめてエレベーターを待つ間と玉銭(だません)で買える範囲のお菓子の小袋を選んでる間の、熱い連中をクールダウンさせる時間も計算に入っている。

 それでも、百円玉や五十円玉を受け取っても階下の売店へ行かない行けない連中はいる。

 いい(とし)すぎてるのに、発令の紙と一緒にわたしが渡した五十円玉を固く握りしめている。そんな連中には、空いてる方の肩にそっと掌を置き、こう(ささや)いてやるしかない。

「その五十円玉、そろそろ穴のところが膨らんでいるだろう。それっ、アーモンドが入ってるチョコだから、そのままでも甘く食べられるから」

 やっとチョコの茶色で少し染まった発令の紙を剝がして甘いものを口にして呉れるところで、覚めた。




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