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ノスタルジアとメランコリア

 昨日からの波風が強かったせいだろうか。ひと悶着を経て眠りに落ちたあと、夜すべてに夢が廻っていた。

 妻は、疲れて、薄い眠りに落ちているようだ。わたしの夢のもとになる視線やら念やらを一晩中送り続けて疲れ、眠りにおちたのだ。そう思うと、恨みがましさよりも可哀想の気が先に立ってくる。

 やはり、長年連れ添っていた夫婦なのだと思った。


 その間中、全てに山のかたちが見えていた。

 すがたや話しに顔を出すわけではないが、大きさや重さから伝わるやりきれなさにずっと目が中空(ちゅうくう)を泳いでいたから、きっと夜の間中それ程のものを相手にしていたのだろう。

 それでも積み上げねばならない。そして、向こうまで渡っていかねばならない。書くことによって。書き進めることによって、一文字一文字を積み上げ、百万文字までの塔をなし、その高さと重さでゆるゆるもやもやの足元を揺るがないよう固めていかねばならない。

 いったん降りて、既に層になっている2年前を触ると2年前の拙さを感じる。それでも反古(ほご)をめくるようにそれらの欠片(かけら)ひとつひとつを剝がしてやると、年末の大掃除や引っ越し前日の梱包や亡くなった両親(ふたおや)の遺品整理してた後ろ姿まで想い出しそうになり、泣きたくなった。

 どれもこの身から出た錆びなのだ。抜けて零れて、もうこの世のどこを探しても存在しない。

 果てしなしノスタルジアとメランコリアに溺れそうになり、急いで、覚めた。

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