それを覚えていようと、髭の中にメモした
大きな振り子が左右180度を目一杯つかって、行き来している感じだった。
覚めたあとの大事な何かを思い出させるように何度もそこを往復している。こちらに近づいたときに大事な何かに近づこうとするのだが、それが何なのか目を細めるたび、相手は遠ざかっていく。
その繰り返しだった。
あーもうちょっと、そうもうちょっとなのに・・・あーあと、すでに両目は眼窩から飛び出しブランコの足元にへばりつき、この揺らめきからなんとか抜け出す算段はないかと知恵を絞っている。
おツムよりも健気にうんうん唸ってる眼の声をメモしようにも紙も鉛筆もない。ひと舐めしたひとさし指が中空のその辺りを捕まえ何かかに当たった。
すぐにその謄写された感じを口の中に放り込んだ。
が、ダメだった。
味もそっけもない味しかしない。
わたしの方も揺れながらうんうん唸っていたら、溜まってきたものがかたちになって零れだす感じがしてきた。どこかと思ったら、顔のあたりがムズムズする。眼は足元なので、そこからだと良くは見えないが、手を当てると髭が正月休み1週間剃らなかったとき同じくらいまで伸びていた。
途中途中日ごとに撫でて育てていってれば自分のものと感じるはずだが、こうもいきなりでは自分とは無縁のものが生えてきた感じがする。目が離れただけでももう身体はばらばらなのに、身体がすでに自分のものではないような気がしてきた。自分のものではないと割り切ったら、かえって見えにくいはずのそのあたりが向こうから近づいてきたのか指の先から見えてくるようにな感じになる。
ひらめいた。
これを使おう。
早速髭剃りの準備にとりかかる。指先用の携帯カミソリがあったので、指サックにしておや指ひとさし指にはめてジョリジョリを始める。指が見てるのは漢字かな交じりだが、ぶきっちょなので画数の多い漢字はひらがなに置き換えて、数珠つなぎに繋げていく。
幼稚園のときのお遊びで、粘土細工のようなもので輪っかを作っていた感じも一緒に炙り出されてくる。
文字に沿って剃っていくのも大変だが剃った痕を読むのはもっと大変だ。間違いなく写してるはずなのに、どうしても判別がつかない。カミソリを終えたおや指ひとさし指も一緒になって手伝ってなぞってくれるが、いっこうに見えてはこない。鏡文字かと、両手を交換してクロスの格好までしても、いっこうに感じがつかめない。
ー 感じはつかめないけど、漢字もつかめないよなぁ
あーあ、なんで一番いいときに、こんなダジャレなんか挟み込んでしまったんだろう。
息を殺し脇汗も止めて積み上げてきたトランプのピラミッドが、そんなドアを開けた間抜けのお陰で一気にぺちゃんこになって、覚めた。




