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すでに手足のおちた鈍い銀色のかたまり
全体に湯船の中に沈んでゆらゆらするものを見ている温かさに包まれていた。
女子高生が多くいる施設だった。学校ではなく施設が持つ意味の相応しい何か隠そうとする大きな意図が濃厚に占められている。
彼女たちが隠そうとしてるのはひとりの汚いジジぃだ。やせて乾いて小さなミイラのよう。片手は無理だが両手だったら軽々抱ける赤子と同じ大きさで、その忌まわしさが目立つ存在に映って隠そうとする意図が施設全体を包むほどに大きく膨らんでいったのだろう。
覗き込むように近づいていくと、わたしもそこに立ち会う羽目になり、そのジジぃを託された。すでに目鼻や手足の落ちた鈍い銀色の砲弾の姿をしている。その輩を、彼女たちは自らの少ない布をいとも無造作に剝ぎ取り縫い合わせ、真綿の中の宝物のように扱い譲り渡そうとする。
わたしはこれからどうしていいかわからなかったが、これまでもこうして扱っていたからと途方に暮れる顔を出さずにその場をやり過ごした。