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バットの縁(ふち)を乗り越えてくるもの

 広い階段だ。ショッピングモールの中央から左右に別れるような広い階段だ。それが吹き抜け天井が見えるそれぞれの上階に繋がっている。

 それが、地階に潜ると、病院の手術室とそれに併設された待合室に繋がっていた。窓はあるから地階ではない。けれども、あまり他から在所(ありか)をしられたくないのか窓は開けられた試しがないようにうかがえた。

 先に母がいた。けれどもわたしの母ではない。それに気づくとわたしもわたしではないような気がする。そんな寄り合い所帯のもの達が終わるのを待っている。カチカチカチの秒針だけが鳴っている。いつまで経っても時間よりほか動いてはくれない。

 と、先を記していたら、大きなバットに何か詰めて看護師が次々となかに入ってきた。

 かさのある何か長細く硬いものだ。そのものを直に見たことはないが、生乾きのかんぴょうというものはこうしたものかもしれん、と思った。

 しかし、かんぴょうではない。

 見たこともないくせに、かんぴょうなんぞと無難な例えを口にしようとする辺りで、そのものの怪しさに気づいていた気がする。箱型にきっちり納めていた腸がはみ出てしどろもどろになったものか、その寸法と大差ない(なか)に住まうギョウチュウか、そのような(たぐい)がバットを乗り越えて顔の一部をさらけ出そうとしてる。(そと)を覗き見るだけでは足りず、(ふち)を乗り越える小さな掌が見えだしたところで、覚めた。



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