靴先の白い靴
靴屋に居るらしい。
大きくはないが上下2階で従業員を廻しているような店だ。わたしは上の階で接客してもらってるから少しお高めの客で、そうした客を扱う店員とお喋りしながら靴を選んでいる。2階にはワゴン山積みの靴にエンドレスのほじくり作業をしているおばさんはいないし、自分の靴を買ってもらいに連れてこられているのにはじめから飽きて走り回っている幼な子もいない。
快適な買い物するための大人の空間だ。
それが、少しずつ展開が変わってきた。落ち着いた空間のところどころがモゾモゾし始めた。それが合図なのか、その妙齢の女性店員はわざと少し困った状況を作り出し、わたしから遠ざかろうとする。わたしはわざと空気の読めないフリをして穏やかな顔を崩さない。そんな綱引きばかりを繰り返していても、当然引っ張る方が強いから、彼女は「少しお待ちください」を告げて奥へと引っ込んだ。
わたしは、理由も告げず奥に引っ込んだ店員にただただ待たされるだけだった。お客を待たすには長すぎる時間が経っていく。さすがにわたしもモゾモゾの空気を吸ってイライラし始めると、レジ脇のクリップに次のスタッフに宛てたメモが挟まっていることにはじめて気づいた。それは、そのお客にも読んでもらいたいのか畳まれず拡げたまま挟まっていた。
ー この店の同じ靴のクレームの過去最多は6回。でも白い靴先の靴のこのお客は7度目を言ってくるー
わたしは、上の階で大人の快適な空間で買い物をする少しお高い客として接客を受けていたのではなかったのだ。と気づいたところで、覚めた。




