プラモデル屋
昭和の末。硬質だけど肌合いが温かだったバブルの質感を記してみました。
おもちゃ屋かと思ったがプラモデル屋だった。
店に入るなり、大小の長方形の箱ばかりが平積みされている。こうしたマニアックなものでも人気の多寡が大きいのか、入り口に近い方には同じラベルの貼られた縦積みがポーンとせり出して、大型書店で見かける手づくりのポップが錘と一緒に震えていた。
ー 小っちゅなお子様に大人気、空飛ぶロボット、MSR-4
ー ガガガっ、ガー どきゅんどきゅん、ドきゅん ぜんしんぶきだらけ、ハリネズミ怪獣、モモンガ
いまはクリスマスシーズンだ。
店内は、銀色ラメや金色スパンコールのフリフリを天井に吊し、ワムとマライアキャリーのクリスマスソングが交互に流れる。地味なお客ばかり寄り付く店をなんとか模様替えしたいのか、ちょっと恥ずかしい工夫が見えてくる。
それでも、手を引くような小さな子どもを携えた若い女客に店内は埋まっていた。
なにごともやらないよりもやった方がマシの典型かと感心してみる。
それにしても、小さな子の手を引くママをみて、若い女が真っ先に浮かぶのだから、わたしはこの店の主とどっこいどっこいの齢なのがよく分かった。
それにしても、この店の主の飾り付けはやぼったい。ラメとスパンコールのあいだにハサミとセロハンテープの手の跡が見えてくる。ここの主のごつごつしたいかつい掌が見えてくる。いまでは思い出ばなしにしか聞いてもらえないバブル時代の賑やかなガヤガヤした夜が聞こえてくる。
それでも、いや・・・それだから、わたしに温かな気持ちを呼んで呉れる。良い子たちや若い母親たちにもそうした掌の温もりってヤツが伝わればと思う。
カウンターのような造りになったディスプレイの上に緑色したT-レックスがいた。
圧縮空気で膨らませ上下をいったりきたりする仕掛けで誰かに振り向いてもらおうと待っている。わたしは素直に誘惑され目と目を合わせるようにしゃがみこむ。同じように、JKのときは水泳選手だった肉付きのいいママが、その上半身でわたしの頭ごと跨いでT-レックスにしゃぶりつき、子どもに何か言っている。
わたしの右ほほにはその子の顔が、少し薄くなった頭頂部にはピンクのテントがピッチピチになったEカップが撫で付ける。
しばらくのその災難が去って立ち上がると、店の主がニヤニヤしながら、まだまだクラクラしてんじゃないのを腹に入れながら近づいてくる。「そのT-レックスも私がつくったんですよ」と自慢げに言ってくる。
やはり、ここはプラモデル屋だった。




