大きいが固くはない白くて丸い筒
得体の知れないものだが、おどろおどろしいものではないふんわりほんわかしたものを大勢が寄ってたかってどうしようかと思案している様子が現れたので、5つ6つの形容詞をとっかえひっかえしながら姿がばれないようにスケッチしてみました。
わざわざ書き留めるのもどうかと思ったが、久しぶりに覚めたあとも目を凝らすと戻ってくるので書き綴ってみた。
大きな工場のような職場に務めていた時分らしい。推し量ったら、そんな処はコンテナ船の浮かぶ港に隣接していた工業用水施設のはずだが、そこではない。雪の深い山を幾つも超えていったからそこが魚沼なのは分かった。
どうらや保健所のようだ。試験器具やら何やらゴチャゴチャするものが多いので雑品庫の名札を掛けた隠し部屋がたくさんあって、そこでわたしは大して偉くはないが、皆んなから「どうするの」とか「どうしたらいいの」と聞かれる毎日を送っている。
固くはないが大きな茶筒を横にした白いものが運び込まれていた。1メートルの直径に5メートルの寸法だから、全ては中に収まらずいくらか玄関から外へとはみ出ている。そんな放ったらかしの状態を誰だかがみつけ、事務室のわたしのところまでまっすぐにやってきたのだ。
「どうしましょうか」
その言い草で、彼女が誰だか思い出そうとしたが、すぐに玄関まで引っ張られたので、それまでとなった。
まずは、固いものや重たいものでなくて良かった。
わたしは、それを口に出して言おうと思ったが、この施設にいるすべての人が溢れ出てきてとぐろを巻いて見守ってきたので、引っ込めた。一番最初にこれに対する何らかを発声した者に、解決のすべてを託そうとする。そんな魂胆はわかっている。此処にいる人間の倍の数の目がすべてわたしに襲ってくると考えると怖くて堪らなかった。
それでも沈黙が深くなればなるほど襲い掛かる力が貯めこまれていくだけだから、わたしはそれを言った。意外にも、「そうですね」と概ねを受け止めた安堵の表情が波打ち、ひとびとはそれぞれの持ち場へ帰っていった。やれやれとわたしもようやく安堵した。
安堵はしたが、1メートル掛ける5メートルの滑らかで弾力のある白いものは何も変わらず、ホールを占拠し、お尻を玄関にはみ出したままだ。大きいがそれに比して重くないのを思い出し、持ちにくい円筒
を何とか二人で工夫しながら持ち上げることにした。
それじゃぁとわたしが掛け声をかけてあたまを持ち、どうしましょうかの言い草の彼女が玄関まで出てお尻を持ち上げた。これの入る雑品庫はと考えながら後ろ伝いに歩き出すと、彼女も素直に同じ動線を踏んでいく。思ったとおり大きさに比して重くはなかったし、ふたりが浮かべている雑品庫は同じ隠し部屋だったから、大きいが固くはない白くて丸い筒はスムーズにそこへと導かれていく。
「安穏くん」と、やっと彼女の名前をが思い出せたら、覚めた。




