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銀鼠ふたたび
銀鼠の江戸小紋であしらえた女の胸に小刀が刺さったとき、刃の照り返しに銀の粒が鈍く輝き揺れた。それは、たしかに、胸の心の臓をえぐった。帯が持ち上げて出来た秀でた鳩胸の真ん中で小刀のはブスリの音を立て、そのまま立ちすくんでいる。刺したものの姿はすでに闇夜に消えている。それなのに、こと切れずに、すっくと立ち尽くしている。
が、その相手に小刀を抜かせたのも、すっくと型を固めさせたのも、そのまま「えいっ」と身体をぶつけるようにいかせたのも、女の指図なのだから、ひとり芝居で済ませてもよかったのだ。
しかし、現実は、緞帳は降りてはこない。誰ぞの指図がないのなら、こと切れても女は立ちすくんだままそこに居なければなるまい。




