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都市伝説好きな少女の記録

都市伝説好きな少女の暇つぶし

作者: 大浜 英彰

挿絵の画像を作成する際には、「Ainova AI」を使用させて頂きました。

  塾帰りの男子小学生が、夜の通学路を一人で歩いている。

 いいカモが見つかったよ。

「ねえ…そこの君?」

 コートを翻し、私は彼に話し掛けるの。

「何ですか、お姉さん?」

 少年の声は微かに震えていた。

 何せ、マスクを付けた長い髪の女性と相対しているんだもん。

 薄々、気づいてんだろうな。

「私、綺麗?」

「あ、はい…」

 少年の返答に、私の胸は弾んでいた。

 次の展開を想像するとワクワクしちゃう。

「これを取っても、同じ事が言える?」

「えっ!?」

 私がマスクの紐に手をかけた時、少年の表情が凍り付いた。

 この瞬間が堪らない。

「分かるね、私の正体が!」

「く…口裂け女!」

 言うが早いか、少年は脱兎の如く駆け出した。

「五秒間だけ待ってあげるよ!何処まで行けるかな?」

 私の言葉が追い討ちとなったか、運動靴の足音が益々速くなっていく。

 そうして少年が曲がり角を折れたのを確認し、私も反対方向へ駆け出したの。


 ある程度走った辺りで、私はマスクを外して身なりを改めたの。

挿絵(By みてみん)

「アハハ!今の顔ったら!」

 思い出すと笑いが止まらなかった。

 冬休みの暇つぶしに口裂け女に化けたら、こんな面白いんだもん。

「ああ、笑い過ぎて御腹空いちゃった…」

 お誂え向きに、目の前にはラーメン屋さん。

 今日は新しい店を試してみよっと!


 夕食時を外したからか、御客は私だけ。

 こういう古き良き町の中華蕎麦屋さんって、情緒があって良いよね。

「うちのはダシが特別だから、他所と一味違うよ!」

 大将の言葉通り、ラーメンのダシは深みがあり美味しかったんだ。

 これはきっと和歌山風かな。

「秘密を教えたげますよ…コレを煮込んでますからね!」

「わっ!」

 手首の入った鍋を見せられ、私は思わず息を飲んでしまったの。

 都市伝説の「手首ラーメン」って、この店だったんだ。

 確か噂では、真相に気付いた客が次のダシになるって聞いたけど…

「これに懲りたら悪戯はやめましょ、お嬢さん?」

「へっ…?」

 唖然とした私に、大将はニヤッと笑いかけた。

 よく見れば鍋の手首も、百均の玩具じゃない。

「子供が泣きながら帰って来たんですよ、口裂け女が出たって…」

 さっき私が驚かした男の子、この店の子だったんだ…


 口裂け女の真似は金輪際しない。

 そう約束する事で、私は許されたの。

 それはさておき、あのラーメン美味しかったなぁ。

 もう一度行きたいけど、何度探しても見つかんないの。

 それに、あの辺りのラーメン屋は10年前に全焼したって聞いたけど…

 何かの間違いだよね?

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― 新着の感想 ―
[良い点] >よく見れば鍋の手首も、百均の玩具じゃない。 あはは… ホラーですけど笑ってしまいましたm(*_ _)m キーワードの「模倣犯」の意味が分かりました。 でも。 >それに、あの辺りのラー…
[一言] ラスト、怖いはずなのになんだか子どもを想う親の心が感じられてじんわりしてしまいました。 そしてラーメンが食べたくなるという……(*´ω`*) 悪戯はやっぱりしてはいけないですね!(`・ω・´…
[良い点] 無駄のないサクサク展開、三段のオチ。一段めまでは予想がつく作りだけど、そのあとが意外で面白かったです(*´艸`*)
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