欧米の価値観について思うこと
少し前にトルコのイスタンブールにある世界遺産ハギア=ソフィア(ブルーモスクともいいます)について、博物館からモスク(イスラームの寺院)に戻す、というニュースがありました。ハギア=ソフィアは6世紀の東ローマ帝国時代に建立されたキリスト教の大聖堂で、宗派は東方正教です。イスラームのオスマン帝国がこの地を獲得して、これをモスクにしたのです。
さて、この件に関して世界各国が批難したそうですね。キリスト教とイスラームの和解を反故にすると。文明社会への挑発だと。教皇も大変悲しく思ったと。
これを聞いて思ったのが、「西洋ってかなり傲慢だよね」ということです。薄々気がついてはいたんですけどね。
まず全く逆の例にあたるものがあります。メスキータと呼ばれる教会で、8世紀のイベリア半島で建立されたのですが、年代と場所でピンとくるかもしれません。何を隠そう、イスラーム王朝の時代にモスクとして建てられたのです。その後キリスト教勢力が攻めてきて教会にして、そのまま世界遺産となったのです。ハギア=ソフィアの件を批難するなら同じ穴の狢です。
ハギア=ソフィアからは離れますが、例えば所謂「ブルカ禁止法」を見てみましょう。ちなみにブルカはイスラーム文化圏において女性が着る、肌の露出を避けるための衣服のことですね。
この法律は宗教色の強い服装を禁じる法律で、ブルカの他にも大きめの十字架のネックレスとかも禁止しているらしいですが、生活への打撃の面からは敬虔なムスリム(イスラム教徒のこと)の狙い撃ちです。イスラームは宗教であると同時に生活様式でもあります。豚肉を食べないとか、ラマダーンの日中は断食するとか、完全太陰暦を使うとか、女性は肌を隠すとか。これらを無闇に規制するのは、散髪するなとか、化粧するなとかと同じようなものだと思うのです。
日本が当事者になる問題に関して言えば、捕鯨問題があります。西洋の捕鯨忌避は病的なものがありまして、元は鯨油のための乱獲の負い目だと思うのですが、現在は「鯨は頭がいいから食べちゃダメ」とか「捕鯨は残虐だ」とかの理由で反対する方もいるそうです。でも頭の良さは食卓に乗せることの可否とは何ら関係ありませんし(自らが死ぬことを理解するといいますが、遅かれ早かれ死ぬので死因の差でしかありません)、食肉は大なり小なり残酷なものです(流石にフォアグラには敵いませんが)。そもそも食文化を他者に強要しようという時点で傲慢です。
日本以外の先進国は欧米人で満たされています。欧米は覇権文化圏でそして現代社会の礎を築いた文化圏で、日本だけが他とは異なっているためこちらが間違っているように見えてしまうことが多々あります。でも「間違っている」日本ではどうしてコロナがあまり広がらないのでしょう? 「間違っている」日本ではどうして水道が安全なのでしょう? 「間違っている」日本ではどうして女性が夜間も出歩けるほど治安がいいのでしょう? 「間違っている」日本ではどうしてアノマロカリスという知っても誰得な古代生物が有名でいられるのでしょう?
欧米の価値観は絶対ではないのです。覇権文化圏の欧米の価値観もふさわしくないことだってあります。それを押し付けるのは傲慢ですし、それを甘受する理由もありません。わたしは欧米を盲信するのではなく日本特有のものを保っていくほうがいいと思うのです。