果樹園会合 2
短い書面を見て姉妹は改めて思ってしまった。
「やっと終わったのだ」と。
一見すると簡潔でただの業務連絡に見える一文。
それは姉妹らにとって感慨深いなんてものではなかった。
「これであの件を知っている人間は全員から許されたことになったと思いたい」
「思いたい?」
「ああ。被害者たる樹に確認は取れていないからな」
たしかにこの文書には樹の名前はない。
もっとも樹はあの状況下での被害者なのでこの文書への羅列はふさわしくない。
「だったら今日のこの会合に呼べばよかったんじゃないの?」
「そうだねぇ。そうすれば本当の意味で全員となるし」
「・・・記念すべきこの日に会いたかった」
「そういえば梅姉からもらったメールには私達を集合させるような文面だったけど・・・」
「・・・いっくんに来てもらうような感じじゃなかったね」
メールの文面はあきらかに姉妹に向けたものだった。
あの文面だと樹はこないだろう。
自分自身に未練があるっていうのはどういう状況か全くわからない。
梅の確認取れていない発言に姉妹は口々に不満を出す。
「いや。最初は樹も呼んで改めて謝罪も含めての会合にしようとは思っていたんだ」
その不満について梅は受け止めつつちょっと言いにくそうに言い出した。
「本当に許されるためには被害者に結果的にしてしまった樹も呼んでまず再度の謝罪から入るべきだとは思っていた」
「梅ちゃんにしてはめずらしく歯切れ悪い言い方ねぇ」
「常識的に考えればそうすることが一番筋が通っているとは思ってはいたからな」
「・・・梅がそう考えているのにしなかった」
「てことは何かわけがあるんだよね?」
梅は完璧超人と呼ばれる頼れる長姉だ。
わけもなくこんな失策はしないだろう。
それが同じ年の桃や杏含む妹たちの共通認識である。
それなのに自分で見つけた穴を埋めずにいることに違和感を感じざるをえない。
「いやな。これは私が親の言いつけを守り続けた結果というかなんというか・・・。むしろキミたちはどうなのかという疑問すら湧くことなんだが・・・」
若干いぶかしげに態度を変える梅。
しかし次に言葉にしたセリフは全員を納得させる簡潔な言葉だった。
「私は樹の連絡先を知らないんだ」