集合 海外組
「ところでどうなんだ最近は」
「判を押したような生活ってところかしらぁ」
「・・・ボクも同じようなもの」
女三人集まれば姦しいとはいうがほどなくして雑談が始まった。
姉妹として育ったとはいえそれはあくまで高校時代までのこと。
それぞれの道に分かれていけば姉妹といえどなかなか話す機会などないものである。
今の暇な時間に自分たちの現状を報告するという雑談は非常に有益であった。
昼近く。
やっぱりちょっと早く来すぎてしまったと思いはじめた三人はいったん昼食をとるために各々家に顔を見せに戻る。
小一時間つぶし再び小屋に戻るとそこには新たな集合者がいた。
「あ。お姉ちゃん久しぶり」
「・・・これはどういう状況だ」
「どうって暇だから私の作った新作メイクを披露したくて・・・」
「ウチはそのモデルになってくれと言われている」
「それを撮影させてもらうべく交渉してる」
土下座している女が二人。
困惑している女が一人。
新作メイクを~とのたまいながら土下座なのは白木家四女・白木花梨。
事件後〈スキャンダル〉後も同級生の幼馴染枠として樹に常識の範囲内でくっついていた勝ち組である。
高校卒業後はくっついていたことに対して姉たちへの後ろめたさを覚えるようになり単身アメリカ・ハリウッドへ。
そこで特殊メイクというものにドはまりしてメキメキ頭角を現していくというアメリカンドリームをつかんだ女だ。
有名監督からも名指しで指名が入るこの女性にもやっぱり『ゴッドネス・ハンド』なんていう二つ名がある。
もう一人の撮影をしたがっている土下座は青木家四女・青木甘夏。
彼女も花梨と同じく高校時代までの勝ち組ではあったのだが卒業後はなぜか芸の道に進んでしまった。
大道芸で日本各地・世界各国を飛び回るという姉妹の中では異質の存在であるがヒゲダンスみたいに軽いものから太神楽や手品、雑技に軽業といった熟練のものまで習得しているため各地でひっぱりだこ。
有名な劇場でも公演したことがありその名は二つ名の『東洋のいたずら天使』と共には世間広く響いている。
その傍らでユーチューバーとしても活躍しており大道芸の面白さの解説や女だてらにやってみたシリーズなどで人気を集めている。
そんな二人に困惑しているのは白木家次女・白木苺。
事件〈スキャンダル〉後のストレス解消にふらっといった打ちっぱなしで開眼してしまったゴルフの
才能で今や世界を転戦するトッププロとなっている。
傍らモデルとしても世界的に活躍するというまさに二物を与えられた奇跡といっていいだろう。
ただ・・・姉妹で一番身長が低くそのせいで『ターフの妖精』という本人的に不名誉な二つ名で呼ばれている。
モデルとして活躍するにはそれなりの身長が必要なのが普通だがそれを補って余る可愛さが彼女を世界的モデルに押し上げた。
彼女のせいでモデル=高身長という伝統がくずれているとかいないとか。
「・・・はぁ・・・あんたたちは今日何しに来たの?そんなことをしにわざわざ海外から帰ってきたの?」
ホストたる梅のため息交じりのあきれ声。
そう。
彼女たちの主戦場は主に海外。
今日のためスケジュール管理をしっかりしてここに帰ってきているのだ。
すべてはそう。
愛ゆえに。