抜けない癖
緊張しつつも教室の扉を開けるとまず目に入ったのが大きな黒板。軍学校では座学もスクリーン使ったものだったので高校以来だ。そして部屋を見渡すと興味深々といった探る様な視線が多く突き刺さる。突っ立ててもしょうがないので黒板のすぐ前に置いてある教壇の前まで歩いて行く。そしてこれから俺の生徒になる学生達に正体(正面を向いて気を付けすること)して号令を発する。
「気を付け!」
シーン.......
あれ?おかしい。軍ならこう言えばみんなびっくりするくらい機敏な動作で気を付けするのに。声の覇気が足りなかったか。
「あのー、先生。いいですか?」
「お、おう。いいぞ。どうした?」
ちょっと慌てながらも手をぴんと伸ばした女子生徒の発言を促す。
「えっと、なんでそんなに怒ってるんですか?」
「え?怒ってないけど?」
そう言わせてクラスを見渡してみると驚いているような生徒やビビった顔をしてる生徒が散見された。
「え?じゃあなんでそんな大声で気を付けって言ったんですか?」
どうやら失敗したらしい。基準が完全に軍学校のものになっていた。
「あー申し訳ない。別に怒ってるつもりはなかった。今後は気を付ける」
「はぁ。まぁ怒ってないならいいんですけど.......」
そう言うと教室内の雰囲気も和らいだように感じる。
「先生!じゃあとりあえず自己紹介してください!」
怒ってないと分かったからか元気いっぱいって感じの女子生徒が発言してくる。茶髪で肩までの長さで巨乳。高校生にして柏木先生をも超える逸材だ。しかも童顔で可愛らしい。軍には絶対にいない感じの女の子だ。
「よし、分かった!」
先程の失敗を払拭するためにも優しくおおらかな感じで自己紹介しよう。できるといいな。
「名前は佐々木治郎。さっきは大きな声を出してしまって申し訳ない。趣味は特にないけど強いて言えば射撃、格闘術。まだ新任なので色々分からないこともあると思うけどよろしく!」
中々無難な自己紹介ではないだろうか。完璧だ。
(ねえ、射撃だって)
(それに格闘術もだよ)
(怖いね。なんで教師やってるんだろ?)
(さっきもいきなり怒鳴られたし)
うん。完璧なはずだ。そこの女子生徒ヒソヒソ話はちゃんと聞こえない声量でしろ!
「よ、よし!じゃあ次はみんなに自己紹介してもらおうかな。じゃあ最前列最右翼の生徒からよろしく!」
そう言うとみんなポカンとしていたが俺が指した生徒、さっきのなぜ怒っているか聞いてきた生徒は起立して話し始めた。
「先生。最前列最右翼なんて言われても中々みんなには通じませんよ。赤坂茜です。よろしくお願いします」
そう言って座る赤坂は黒髪ロングの美人系な生徒だ。胸部は絶壁。というかまた失敗したらしい。まぁこの癖はそう簡単に抜けるものでもないし気長に付き合っていこう。
「よし、じゃあ次その後ろ」
そう言うと次の学生が自己紹介を始めた。その流れでとんどん進んでいき、いよいよ最後の1人となった。しかしその最後の1人は反応しない。それもそのはず彼女は俺が教室に入って来た時からずっと机に突っ伏して寝てるのだ。それを見かねたのか隣の生徒が方を揺さぶって起こす。
そして緩慢な動作で顔をあげた。そこにいたのは好みどストライクの女子生徒だった。