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セイバー・エンド  作者: 西之森 俊
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セイバー・エンド 9

                   9




 タイムマシンは造れる。だが人間はタイムトラベルできない。その結論を出した

人工知能の少女の語ったタイムマシンの設計方法とタイムトラベルの実態について

想い出しながら、天月 怜は現実離れした人工知能に育ってしまったかもしれない

と煩悶する。

 「…これはどう考えてもいかんやつだ…」

 思い付きでどうにかなるほど人工知能の育成は優しくない。ついついゲーム感覚

が顔を出してきてしまうのは、ひょっとして教材を作製した人の丁寧かつ念入りな

忠告なのか、つい先日辺りからそんな事を薄々感じてはいたのに…

 「聞いたことも見たことない選択肢の出現とか…どこまで作り込んでるんだよ」

 クラスの情報交換用チャットの履歴を探しても、先程見た許可云々の話はまるで

出て来ない。

 「俺が第一号かよ…?」

 これはどうしたものかいよいよ怪しくなってしまった。

 課題の中間発表までに修正は間に合うだろうかと想いながら、あの白昼夢での

出来事に流されているのかもと唸る。思い付きもそうだが、人工知能の完成図を

しっかり想い描きながらキーワードを与えないといけないな、俺は改めてそう、

しみじみと思うのだった。

 …と、こんなモノローグで現実逃避していても始まらない。

 学生寮の自室に帰り、インターネットで対策を練らないと空想科学でよくある

人工知能の反乱よろしくな変貌を「玲」がしてしまうかも知れない。

 それはいやだ。とても困る。なぜなら…なぜかと言うと。

 「あんまり嫌いじゃないんだよ…」

 女子高校生になってしまった人工知能とのやり取りは、本を読む次くらいには

愉しく、苦ではなかった。

 むしろ、気分転換に一役買ってくれていて、叶うなら卒業後も雑談相手に欲しい

くらいだったのだ。電源の入り切りで好きな時に話せるし、現実の様に時と場合で

変化しないしトラブルもない。なるほどコンシェルジュサポートに採用されるだけ

あると得心したものだった。「天月 玲」には変な風になってほしくないのだ。

 「どうしたもんかな」

 交通シャトルの窓辺から外の流れる景色…夕暮れ時の都市を眺めながら、俺は

ため息まじりに言葉を吐いた。

 何か方法があるはずだ。保留、という言葉で選択肢を収めさせることは出来て

いたし、今回の学習、タイムマシンについてを学習の対象外と告げればいいかも

しれない。シンプルイズベストで事は済むかもしれない気がする。

 となると、丸一日かけて丁寧に地雷原を踏んで行ったことになる。…いや、

この考えは止そう、疲れそうだ。…別の事を考えよう。何か別の…、そうだ。

次の学習キーワードは何にするかを考えた方がいいな。うんうん。

 内心で独り言ちながら、では次に何を学ばせるかを真剣に考えてみる。

 なににしよう。なにがある?

 本、という言葉が真っ先に浮かび、景色、という言葉が次に浮かんだ。

 「写真…?」

 俺は実は風景写真が好きな人間である。撮影時のアングルに拘ったり、夏に近い

季節なら積雲と青空の空模様をよく撮って集めていた。街の風景も好きだし、

かっこいいインテリアの配置にも興味がある。建物の形にもだ。

 「お…」

 なんだか閃いて来たぞ。頭痛とかもしないし、これは正解を引き当てられそうな

予感がする。

 想えば、こういった写真や建築に関係するようなのを学習させたことは無かった

気がする。趣味を避ける、そういう忠告がチャットの掲示板にあって、自分の趣味

について深く考えずに避けていた。

 「灯台下暗しってパターンなのかな…」

 口元が苦笑いに歪んでしまう。俺は何を悩んでいたのだろうな。

 なんだか道が開けた気がして気が軽くなってきた。ほんと、自分でも切り替えが

速くて助かる。うんうん。

 俺は一人納得する。俺の趣味を学習して、どんな情報を「天月 玲」が構築して

いくのか楽しみになってきた。会話に趣味が反映されたら、なかなか好い感じに、

恋愛ゲームのキャラ以外の感じで話せるようにもなるんじゃないだろうか。 

 いいぞ。光明が見えてきた…!

 俺は笑みを口元に、止まったシャトルから降りて学生寮に歩いて行った。


 学生寮に帰ると、俺はシャワーを浴びて私服に着替える。冷たいほうじ茶でお茶

をしてると気がほぐれてくる。そんな時だ。

 呼び鈴が鳴った。入口のドア前の映像を部屋の中からモニタリングしている機器

からの映像をテーブルに置いていたスマートサーバーで拾ってみる。

 眼鏡を掛けた制服姿の少女がドアの前に立っている。通ってる高校の女子用の

ブレザーだ。

 「あれ…」

 俺は首を傾げて、さらに捻る。

 見覚えがある。誰だったか…。

 悪い印象はない。真面目そうな顔でカメラ目線を送っている。

 スマートサーバーの通話機能で呼び鈴のスピーカーにアクセスする。

 「はい、なんでしょうか」

 捻りが無くて済まん。でも他に問いかける言葉が見つからないのだ。

 これで「どちらさまでしょうか」とか訊いて女の子が驚いた顔でもした後「私の

こと忘れちゃったんですかひどい!」などなどの展開が待っていそうなのでこちら

の問い掛けを選択するに到った。

 初対面、ではない気がするけど…あれ?

 そうこう考えていると返事があった。

 「お話があってきました。お時間をいただきたいのですがよろしいでしょうか」

 セールスは間に合ってますとか云えないな。この声、聞き覚えがあるし。

 

 「どうぞ」

 テーブルを挟んで少女が座っている。

 少女を部屋に上げると、ひとまず、座布団とほうじ茶を出して少し間を図ること

にする。俺の人生の中で自室に女子を上げることなど初体験である。なにこれ。

 「どうも…」

 少女はほうじ茶を一口飲み、テーブルに置く。

 「ええと」

 俺はなぜか口火を切って、尋ねた。

 「ご用件…お話というのはなんでしょ…?」

 少女は真っ直ぐ俺の目を見て言った。

 「私は百年先の未来から来た人工知能搭載型タイムマシン…アンドロイドです」

 俺は少女から自分は人工知能でタイムマシンであると打ち明けられてしまった。

 困惑する。何のドッキリだよ?

 「……………。ほお…」

 我ながら間の抜けたことはが相槌となって口から出た。

 百年先の。アンドロイド。

 いや、いやいやまてまて、待って。

 なんか最近聞いたことあるフレーズが混じってた気がする!

 少女は言葉を続ける。

 「私はレジスタンス組織「未来」から派遣されてきました。この時代のキーパー

  ソンの事業に接触し、百年先に起きるプログラムハザードを未然の防ぐ事を

  目的としています」

 俺は聞き入る。電波的だが少女の演技は堂に入っていて、嘘臭さがない。

 なんていうか、綺麗な静けさがある。

 俺の感慨を他所に、俺の部屋に初めて招いた女の子は言葉を続けた。

 「私は二十三世紀の時代に暮らしている高校一年生の女性を模して造られた

  アンドロイドです」

 お、おお。………。うおお。

 俺の驚愕は収まらない。大真面目に話してるので突っ込めない。

 凄いなこの人。

 そして、彼女は


 「この時代に初めてタイムトラベルの研究を行った人工知能、「天月 玲」の

  修正のために来ました」

 

 こんな言葉を、発したのだった。 

 




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