二回目の吸血 終
「そこの百合ップル、そんなところでイチャイチャしてないで、本の中身見て欲しいんですけど」
追いかけっこをしていた私と姫に、雪はそんなことを言い出した。
別にイチャイチャしてるつもりはないんですけども。
「イチャイチャしてないし、それに見たくても見れないよそんなの! 私と水がしてるところが書いてあるんでしょ? それ」
「うんまぁそうだけど、いいじゃん別にもうあんた達二人何回もしてるんでしょ? S──」
その禁句の言葉を、言おうとした雪はすぐさま姫に殴られた。
「その言葉だけはなんとしても言わせないからね!」
「いったいなーもー」
「それに私まだ処女だし」
その言葉を聞いて、雪そして本を読んでいた風までもが驚きを見せていた。
「「えええええええええー!」」
すると驚いた二人の目線は、私の方に向いた。
「まぁうん一応私もうん」
「あの人目憚らず、ちゅ、ちゅしているあの二人が、学校中の男子から顔はめちゃくちゃいいのに、百合だからという理由で絶対に手を出せない、校内一位と二位のあの姫と水が処女?」
めちゃくちゃ早口だった。
というか、手を出せないランキングとかあるの? 私達が一位と二位ってことは、三と四は雪と風なのではないだろうか?
そんなことを考えていると、雪が急かすように話しかけてきた。
「それで? そこの百合ップルこの本の中見るの? 見ないの? どっち」
私達二人は、少し照れながらも同時に答えた。
「「見る!」」
「それじゃあ早く見よ」
そう言うと雪はページを開き始めた。
「なんで一ページ目から私の部屋が描いてあるの?」
「まぁなんかあんたら二人が、する時はどっちかというと姫の家かなって」
「何その変なイメージ」
「あ、姫家に帰ってきた。可愛い」
「もう水そんなことを言われたら照れちゃうよー」
雪と風の私達を見る目が引いていた。
「あ、水もきたよ! 夏の制服の水だ可愛いー!」
「もうこの前まで毎日見てたじゃん」
雪と風の私達を見る目がもっと引いていた。
「あー水が私を押し倒した!」
「あー!私が押し倒したのにキス先にしたのは、姫だった」
「水はそういう運命なんだよ」
「ホントに私が押し倒した時は絶対、私からするから」
「頑張ってね」
「あー! いつのまにか私が下になってるーなんでー!」
「だからそういう運命なんだってば」
「もー!」
するとそこで、雪が突然喋り出した。
「なんであんたら二人がキスしてるシーンで、そんなイチャイチャできるの?」
雪は根も葉もないことを、突然言い出したので、私は否定する。
「雪はどこを見て、私達がイチャイチャしてるように見えたの? ねぇ姫?」
「うん、全然イチャイチャしてないよ」
「あーもうお前らさっさと結婚しろ!」
「結婚なんてまだだよ、もっとちゃんと気持ち確かめないと」
「そうそう」
「だからその気持ちの確かめがいらないぐらいに。気持ち悪いぐらいイチャイチャしてんだから、さっさと結婚しろって言ってんの!」
「えーまだ無理無理、そんなことより早く続き見よ」
私がそういうと雪は、呆れたように言い出した。
「わかったよ。もう私ツッコまないからね」
するとページをめくり出した。
「あー姫が私の服、脱がし始めたー!」
「何この脱がされてる時の水の顔は、もうやばいよ可愛い!」
「◯◯◯◯◯◯◯◯◯◯◯◯◯◯◯◯◯◯、絶対◯だらけだけどもう見るの止まらないよ」
「◯◯◯◯◯◯◯◯◯◯◯◯◯◯◯◯◯◯
◯、可愛いよー水」
「足で姫が◯◯◯◯◯◯◯◯◯◯◯◯◯◯◯◯◯◯◯◯、早く早く、ページめくって」
〜これ以上やるとマジでBANされそうなので、飛ばします〜
「この本いくらで売ってくれる?」
本を見終わった私の第一声これだった。
「待って私は、その値段の倍の額出すから私に売って!」
姫は私が買おうとしたのに、なぜか止めに入った。
「なんで止めるの? 私が買いたいの!」
「私もこの本欲しいの!」
私達の言い争いを止めるように、雪が間に入ってきた。
「私一言も売るなんて言ってないよ!」
「え!?」
「なんで?」
「売ってよー! お願い!」
「私の今年のお小遣い全部出すから売ってよ! お願い!」
私達は子供がスーパーでお菓子をねだるように、18禁の本をねだった。
やっている行動は可愛いけれど、ねだっているものは、全く可愛くはなかった。
「絶対に嫌!」
私達は二人同時に雪に文句を言う。
「「なんで!」」
雪は少し悩む様子を見せたが、それを隠すように喋り出した。
「だってさっきの二人の会話聞いてたら、なんかもう本をあげるの、嫌になっちゃったから。それにこの本が、あんたらどっちかのオカズにされるって考えたら気持ち悪くて」
雪の言葉は、全然理由づけになっていないような気がするけれど、納得せざる終えなかった。
だってもうこれ以上どれだけ、ねだっても絶対売ってくれないもん。
「もうこういう時の雪は、頑固なんだから」
私はそう言いながら、一つ気になっていることを質問した。
「一つ気になってたんだけどさ、雪はあんなプレイどこで覚えてきたの? 」
私の残り少しのS心が、訴えている今雪を責めたら確実に落ちると。
「な、なんで? そんなこと聞くの?」
「いやちょっと気になって」
私の質問に、雪は明らかに怯えていた。
すると今まで、ずっと黙っていた風が突然喋りだした。
「その漫画、この前私が雪にしてあげたプレイそのまんまだよ」
今まで黙っていたのが、この時のためと言わんばかりの情報だった。
私と姫はその情報を手に入れて、ニヤけた。新しいおもちゃを親に買ってもらった時のように、喜んだ。
「ふーんそうなんだそうなんだ、雪も私と同じ側だったんだね。私は嬉しいよ」
「ってことは風が、私と同じSってことだよね?」
「ちょっとー! 風なんでそんなことを今言うの?」
「いや私のS心が、騒いじゃってね。雪のその顔を見れると思わなかったからさ」
そう言っている風の顔は、私をいじめている時に見せる姫の顔に、とてもよく似ていた。
怖い怖い怖い怖い怖い怖い。あの顔してる時のSの人はホントにやばい。
「雪ーねぇもっと顔よく見せてよ。その可愛い顔をもっとね」
「あのー風さん? 怖いんで私もう帰ってもいいですかね?」
「じゃあこれから私の家来る?」
「いやー今日はちょっと」
雪がそう言い訳すると風は、雪の耳元で囁いた。
「来るよね?」
こっわ。
「うん行きます。行きますからもう私の秘密暴露しないで」
「よろしい。じゃあ私達はもう帰るけど、二人はどうする?」
私は、姫と目線を合わせて返事をする。
「私達はもうちょっといるよ」
「そう? じゃあ帰るね。バイバイー」
そう言って二人は、部室を出ていった。
「風があんなに生き生きとしてるの、私初めて見たよ」
「私もあんな風初めて見た」
私達は顔を合わして、笑いあった。
「ねぇ水、血⋯⋯吸ってもいい?」
「うん」
私は一瞬の間も開けずに、一言そう返事をした。
なぜなら私も吸って欲しかった。それだけなのだけど。
「いただきます」
姫の今までの歯が、とんがった牙へと変わっていく。
とても痛そうなその牙が、私の首元へと刺さっていく。
「うっー。アーっ。痛。」
でもその痛さが、快感になっているそんな感じ。
私は常に喘ぎ続けた。
姫は私に噛みつきながら、部室の床に私を押し倒していく。
私の足と足の間に、姫自身の片足を置いた。
その光景は、もうアレをやっているのと遜色ない光景だった。
このタイミングで、部室のドアを開けられれば確実に二人とも退学だろう。そう感じるくらいに姫は、エロかった。
私はそれから、姫が血を吸い終わるまでの間、喘ぎながら血を与え続けた。
「美味しかった。ごちそうさま」
そう言った姫の顔は、とてもいい笑顔だった。今までで最高の笑顔だった。
私はこの笑顔を見るために、血を上げたそうに違いない。
「これからもよろしくね。姫」
この世の人間は生きている間に、一度は必ず不思議な出来事にあっていることだろう。
私はその不思議な出来事が、幼馴染だったと言うだけただそれだけ。
ただそれだけの話なのだ。




