二回目の吸血 一
〜ある日の学校〜
やっと舞台が移ったか、という感じではあるけれど、今やっていることは登校中と変わらなかった。
そう姫と雑談しているだけ。ただそれだけ。
「姫、この後の授業なんだっけ」
「この後? あれなんだっけ?」
こんなバカな雑談だ。
ちなみにこの学校は、女子校ではないので、もちろん男子はいるけれど、私は一切男子を描写するつもりはない。
この前も言った通り私は、この世に男はいらないと思っている。
なぜならもし女同士で、子供を作れるのならそれだけで、男共はただの労働者。違う、者ですらない。
ただの労働物。すなわち機械だ。つまり男はいらない、そういうことになるのではなかろうか?(これは差別用語になってしまうのかな?)
そんなことを考えている矢先(私の願いが叶ったりはしないけれど)クラスの扉が開いた。
「おっはよー」
そう元気よく挨拶したのは、私と姫が好きあっているのを知っている二人のうちの一人だった。
名前は、雪風 雪 元気がよく私達のグループの、ムードメーカー的存在だ。
ちなみに髪は短めで、胸は大きいので姫は、雪のことを目の敵にしている節がある。(仲はいいけどね)
そして雪の後をつけるように教室に入ってきたのが、私達の関係を知っている(吸血鬼のことは知らない)もう一人。
名前は、雪風 風 おとなしい方で、私達といてもほとんど喋らず、ずっと黙々と本を読んでいる。そんな女の子。(読んでいる本は、百合の観音小説らしい。ハードめなやつ)
見た目は大和撫子っぽく凛々しい、髪も長め、胸も小さめ。そんな感じ。(大和撫子が胸大きいのは違うと思う)
今この話を読んでいるほとんどの人が、雪風二人を双子かなにかと思っていることだと思う。
私も初めて二人を見た時は、双子だと思い込んでいた。
見た目は似てはいないのだけれど、やっぱり苗字そして名前まで、意味ありげだとやっぱり双子に見えてしまう。
しかし二人は、双子でもなければ姉妹でもない、ただの他人なのだ。
二人はたまたま同じ高校に入学して、たまたま同じクラスになり、たまたま友達になった。ただそれだけ。
そんな挨拶してきた二人に(実際は一人だけど)私は挨拶を返す。
「おはよー!」
私はそう言いながら、雪に近づいていく。
「雪──私、雪に話したいことがあるんだ」
真剣な私に、ノリがいい雪は合わせてくれている。
「どうしたの?」
私達二人の周りには、誰かが死んだレベルの真剣な空気が流れていた。
「わ、私今朝ね⋯⋯なんで男はいなくならないんだろってずっと考えてた」
私自身もなんで、今このことを雪に報告したのかよく分からなかったが、雪は本当にノリが良かった。
雪は右手を前に出し一言。
「私も同じこと考えてた」
と言った。
私は雪の右手を握った。
すると私と雪の間に、謎の仲間感みたいなものが、生まれた気がした。
「二人とも早く席つかないと、先生来ちゃうよ」
私達のこの空間をその一言で、壊した姫を私達は睨みつけた。
当たり前だけど姫は怯えていた。
〜放課後〜
私達四人は、ある同好会に属している。
その名前は百合の花研究会というなんとも、やっていることはわかりやすいけど、よく学校が許可したなという感じの同好会だ。
しかしそれはあくまで、表の顔この同好会の本当の名前は。
百合研究会。
活動内容は、百合を研究するそれ一点のみ。
私達は授業も終わり、いつも通り研究室こと部室に足を運んだ。
すると雪が鞄の中から何かを取り出して、喋りだした。
「私、百合漫画描いて来たんだ」
「おおー、どんなのどんなの? 見してー」
私と姫はそんな感じで、興味津々に雪の周りに集まっていく。この時も風は、無表情で本を読み続けていた。(まぁそんな光景もいつも通りの光景だった)
「よかろう。見してやる」
そう言いながら出された百合漫画のタイトルは。
[幼馴染の純愛◯◯◯]
というタイトルだった。もう完璧にR-18だった。
「この前の話で、あー尊いってなるような作品にしようって水と約束したの! 突然エ◯マ◯ガ出されて。あー尊いってなるやついるわけねーだろ!」
「私その話出てないから関係ないし」
もうメタ発言だらけになってしまった。
「まぁまぁ内容は、18禁じゃないかもしれないし一旦その手に持った辞書を置いて」
怒り狂った姫が、刑務所に行ってしまいそうだったので、私はなんとか姫の怒りを収めた。
ふと表紙を見ると、今まで止める側だった私が怒り狂ってしまった。
「なんでこの表紙。私と姫なの? それになんで私が受けなんだよ!」
「「「そこ!?」」」
三人同時にツッコミをされてしまった。今まで黙っていた風までもがツッコミを入れた。
「いやだって。水Mだし」
私はさっきまで姫が持っていた辞書を持ち、雪に殴りかかった。
しかしギリギリのところで、今度は姫が私を止めてくれた。
「だめだよここで、雪を殺してもどうにもならないよ」
私は姫のその言葉に涙した。
涙して崩れ落ちた。
「水がMだって証明してあげるよ」
自身ありげに雪はそう言った。
「どうやって?」
「それはね。姫ちょっと水に向かって蔑みと罵倒をやってみて」
「え!? なんで私が?」
当然驚いていた。
いつもやっていることとはいえ(もちろん遊びで)今この場でやれと言われたら、きついものがあるのはしょうがない。
「いやいつもやってるし」
雪は人の心がわからないのだろうか?
「いつもはやってはいないと思うけど」
「姫だって見たいでしょ? 水のそういう顔」
「べ、別に見たくないと思う」
「はいそれじゃあいくよ。三、二、」
雪の勝手に初めったカウントダウン。
無視すればいいのに、カウントダウンが進むにつれて姫の顔が変化していく。
カウントダウンが終わると、姫の顔は私をいじめる時の顔になっていた。
「キモい」
その一言で私の顔は──ニヤケていた。(変態じゃないぞ!)
「はいーニヤけたー! 水M確定!」
私はそんな雪の煽りを無視して、姫に一言投げかけた。
「もう一回お願い」(変態じゃないぞきっと!)
すると姫はその場から逃げ出した。
私は姫をまるで餌を取られたペットのように、追いかけ回した。




