異世界は一瞬の煌き (第8部)
長老の、古布(羊皮紙)には現代文字
楓が、魔女からもらった古布には
楓にしか、読み解く事の出来ない文字
年代も、実際は
どちらが先に書かれた物なのか?
様々な疑問も残しつつ…読み解いていく
楓
「総ての異世界にある、羊皮紙を揃えないと
全容はわからないけど…取り敢えず…
次に向かう異世界の場所は、わかったわ」
長老
「うむ…」
隆史
「楓…僕も一緒に行くよ」
叶恵
「私も…行くわ!」
楓
「ありがとう叶恵、だけど
今度行くあの異世界には、私と隆史さん
そして…彼と一緒に行かなければならないの」
叶恵
「そう……理由は聞かないわ…
楓を、信じて ここで待ってるわ」
程なくして、1人の男性が、
長老の部屋へ通された、楓は一瞬息を呑んだ
楓の住む世界の後輩、佐藤に瓜二つなのだ
長老
「楓と隆史、そして彼が、
今から、あの異世界へと行くのだ」
楓
「ありがとう、私達に、力を貸してくださって」
隆史
「よろしく」
耀
「光栄です」
耀は、長老が選びし、異次元を自由に行き来できる、唯一の人物、白きローブを纏っている
楓、隆史、そして耀の3人は、
大樹へと向かう、楓が呪文を唱える
大樹は眩い光を放つ、3人の姿は消えた
叶恵達は、長老の屋敷へと戻って行った
楓
「着いたわ」
隆史
「ここか…楓から話を…聞いてはいたが…」
耀
「……………!」
そこには、叶恵達の世界が、荒れ果てた場所
もう1人の叶恵がいる、あの異世界だった
耀
「これは………!!」耀は呆然としている
楓
「大丈夫?…耀さん…、そう、ここはもう1つの
耀さんが住んでいた世界の…未来の場所ょ」
見る影さえない、その街の姿は耀にとっては
衝撃的だった
叶恵
「…待ってたわ…急いで、乗って」
振り返ると、そこには、この世界の叶恵が居た
3人は、叶恵と共に、この世界の大樹へと向かう
大樹も、枯れ果てている
楓は、大樹へと小枝を翳し、大樹の周りを回りながら、最後に、その小枝を根元へと突き立てる
メキメキ、バリッバリッ…と音を立てながら
大樹は、淡い光を放ち始める、4人が見つめる中
枯れ果て、葉も落ちた枯木の枝が、見る間に
光り輝く大樹へと変貌した、大樹の丘も
緑豊かな、丘へと染まっていき
光が、街全体を覆い尽くしていった
楓
「行きましょう!」
隆史
「ああ!」
耀
「…素晴らしい景色に生まれ変わっている!」
叶恵
「急いで!…多分…あの場所にあるはずょ」
4人が向かったのはこの異世界の、
森の奥、湖のあの場所に着いた
楓
「この世界の湖って、
こんな…色をしていたのね?…」
エメラルドグリーンに、染まった湖の横に
耀が手を翳す、湖がさざ波始めた
サーッ…ザァーッ…ゴォーッ……渦を巻きながら
湖の水が、上へと登っていく
楓
「そろそろね…」ズズズズッドドドドザッバーン…
湖の水は落ち、元に戻る、湖の真上には
空の一部に、空洞ができている
空洞からは、何色もに彩られた
美しい光が、湖の方へと、差し込んでいる
楓
「見て!…あれよ」
隆史
「楓、僕が取って来るよ、じゃ、頼むよ耀」
楓
「隆史さん、気をつけて」
隆史
「ああ!大丈夫だょ、楓」
耀
「あぁ…任せてくれ」
耀は、ダイヤモンドの様に
燦めく石を取り出し
天上の空洞から、湖へと伸びる光に投げる
天上から、何色にも彩られた光は
投石を、吸収するように一瞬明るく光り
真っ直ぐに、湖へと伸び、そのまま
楓達の元へと伸び続け、輝く道へと変わった
隆史
「じゃあ…行ってくる」
隆史は、光りの道を湖の中央辺へと
さしかかった、天上から伸びる光りが
湖に届く中間に、細長い木箱がフワフワと浮かんでいる
隆史
「取れた!…耀、今だ!…呪文を」
耀
「ああ…わかった!」
耀は、別の宝石を、取り出すと呪文を唱え始める
細長い木箱は、ゆっくりと隆史の手元に落ちてきた…隆史が木箱を掴み、湖へと辿り着く
耀
「うっ…はぁー」片膝をつく
楓
「大丈夫?…耀さん」
耀
「ええ…大丈夫です」
隆史
「君のお陰だ…耀、ありがとう」
叶恵
「無事、木箱を手に入れられたわね!」
楓
「えぇ…これで羊皮紙が、3枚になったわ
この異世界も…元に戻せたわ」
楓の瞳から、涙が溢れたていた…
楓達は、木箱を手に叶恵の家へと一旦戻った
この異世界にも、木々が揺らす音が優しく
聞こえていた
楓
「この羊皮紙には…何が書かれているのかしら?
次の鍵となる、場所以外に…」
木箱を開ける、その羊皮紙には、文字ではなく
場所を示す地図が、描かれていた
楓は目を閉じ、羊皮紙を撫でると地図上に
地名が次々に、浮かび上がってくる
楓
「次は何処なの?…どの異世界へ
行けばいいの…」
隆史
「楓ーーー!」
耀
「まずい!…」小枝を出し呪文を唱える
叶恵
「楓さん…!」
楓の、体全体が真っ白な光に包まれていく
羊皮紙に乗せた、楓の手から薄っすらと
消えていくように、楓の体は光をはなちながら
羊皮紙の中へと、吸い込まれそうになっていく
楓
「大丈夫ょ…大丈夫!…」
何色にも彩られた、あの湖の天上で見た
光が、点滅を繰り返しながら、楓を包み始める
パーーーーーンッ……ドーーーーンッ……
凄まじい、光と音が、天上から楓へと
雷の様に…落ちた
同時に…辺りは静けさを取り戻した
楓は発光している何色もの光が、
楓の体から、発せられていた
楓
「大丈夫ょ…安心して」
そう微笑む楓の、髪の色は、金色に輝き
瞳の色はエメラルドグリーンに変わっていた
楓の変貌に、声も出せずにいる隆史達を
微笑みながら…
楓
「次の場所は、光で闇を照らすのよ」
隆史
「まさか!!…」
楓
「えぇ…隆史さん…そうよ」
耀
「あの異世界なら…これを…」
楓
「ありがとう、耀さん、ここからは、
私、1人で行かなくては…」
耀から受け取った石は、エメラルドに似た色を
している、放つ輝きの中に
鈍く仄暗い光が薄っすらと見えていた