異世界は一瞬の煌き(第30部分)
いよいよ最後の扉を閉めるときが訪れようとしていた
あれから数週間が過ぎ
また別の扉を、閉ざした楓
体調を、戻しながら
扉を、閉ざしていった
未来の異世界
香穂とお別れを済ませる
香穂
「また、会えたら嬉しいですね」
楓
「ええ、香穂さんまた
いつか、会いたいわ」
涙ぐむ2人、しっかりと抱き合う
楓の頬に、涙がつたう
扉の前に石(宝石)を置き
呪文を唱える
扉は消え、亀裂が
輝きながら、空中に浮かんだ
楓
「香穂さん
本当にまた会いたいわ…」
楓が、部屋に戻ると
隆史達が、待っていた
隆史
「お疲れ様、楓、おかえり」
楓
「隆史さん、ただいま」
全員が薄っすらと、涙を浮かべていた
更に数週間が過ぎたが、
叶恵の異世界の、扉を閉じる事は
楓にとっては
今までより、いっそう辛い事だった
叶恵達の異世界で、暫く過ごす楓
楓
「もう会えないって…
思うと…辛いわ…」
叶恵
「ええ、楓、私も同じょ…」
2人にとっての思い出が
次々と、溢れ出してくる
思えば、叶恵と出会い
楓にとっては、最初の異世界
ここから初まり、今に至り
ここで…終わる
最後の異世界の扉
閉じてきた扉には
亀裂が残り、完全には閉ざせない
不安定なものだが
今出来る、最善の策でもある
叶恵
「楓、もう二度と会えないなんて
あり得ない気がするの、いつか
また会えそうな気がするわ
だけど、今までありがとう」
楓
「ええ、ええ、私もょ叶恵!
何だか、嘘みたいょ
会えなくなるなんて
きっとまた、すぐ会えるわね
ありがとう、叶恵…」
2人共、涙が止めどなく溢れた
お別れの時が近づく
楓
「じゃあ、また、いつか…
会いましょうね…」
叶恵
「ええ、楓、またいつか…」
楓は扉の前に立ち
石(宝石)と鏡を置いた
長い呪文を唱え、唱えながら
右から左へMの文字を型どる様に
掌を翳した
扉は、静かに閉ざされていき
亀裂が宙に浮いた
楓
「叶恵、きっときっと
すぐに会えるわ、今迄本当に
ありがとう…」
いままでの亀裂とは違い
亀裂の輝きは
閃光に近い、強い光を放っていた
楓は、その場でペタンと膝をついた
全身の力が、抜けたような気がした
暫くは、その場で動けず
強い光を放つ、その閃光を
涙に濡れながら、見つめていた
どれほど経ったのか
ゆっくりと、立ち上がり
その亀裂を、あとにした
部屋に戻ると、隆史が待っていてくれた
部屋にある鏡に、話かけてみた
当然、叶恵からの返事はこない
隆史の腕の中で、声をあげて泣いた
隆史
「辛かったね、楓…」
ゆっくりと、楓の背中を擦りながら
ギュッと、固く楓を抱きしめた
楓
「ありがとう、隆史さん
もう…大丈夫ょ…」
隆史
「うん…」
返事をしながら、優しく頭を撫でた
楓の異世界への
長い旅も、終わりを告げた
それから
数カ月が過ぎた
いつもの日常が訪れ
普通の日々を、過ごしていても
寂しさは消えずにいた
楓と隆史は
数週間おきに、公園を訪れ
次元の扉の亀裂の様子を
チェックしていた
これも
マーシャルから教えられた事だった
ある日
誰もいない深夜
公園の亀裂の部分が
一瞬、パアーッと、強い光を放ち
公園中が、一瞬明るくなった
それとともに
亀裂の部分からは
「ヴオォォォォーン…」
小さな重低音が聞こえた
その日も
いつもどおり
会社へと向かっていた
電車の中から外を見る
いつもの景色
その窓から一瞬見えた
公園の方向は
いつもより光が差し
白く明るいように感じた
楓
「まさか?…いいえ
そんなことないわ
昨日は、大丈夫だったもの」
しかし
気になった楓は
電車を降りてすぐ、隆史に電話し
夜に2人で
公園を、見に行く事にした
その夜
隆史が、楓の部屋へと訪れた
2人は、公園へと出かけた
夜の公園は、誰もおらず
静かなものだった
亀裂の場所へと近づく
「ヴォォォーン…」
重低音が、小さく聞こえてくる
楓
「隆史さん、亀裂の様子が
いつもと違うわね」
隆史
「ああ、それに
光の輝きも
いつもより強くないか?…」
楓はバックから、石を取り出して
亀裂の部分に翳した
石は、反応するかのように
強く光った
楓は、呪文を唱える
「ヴォォォーン…」重低音が少し小さくなる
楓
「いったい何故?…」
隆史
「うん…これは
どういうことだろう」
取り敢えず、部屋に戻り
他の亀裂を、確かめに行く事にした
確認して、戻ってきた2人
隆史
「他は変わりないね」
楓
「ええ
他に異常は見られなかったわ」
隆史
「公園だけか…暫く注意しながら
様子をみてみよう」
楓
「ええ、そうね…」
それから数日おきに
様子を見に行った
重低音も落ち着き始め
落ち着いた様にみえた
1週間程経ったある夜
楓が、公園の亀裂に呪文を唱え
様子を見ていると
眩い閃光が光り思わず顔をそむけた
「ヴォォォーン…」一瞬だけ音が大きくなった
すると
亀裂が、大きく裂け始め
裂け目から
眩い光が溢れ出してきた
裂け目は、どんどん大きくなった
次の瞬間!
「ヴォォォーン…ヴォォォーン…ヴォォォーン…ヴォォォーン…」
聞き覚えのある音が聞こえた
楓
「えっ!…マーシャル!!」
マーシャル
「やぁ、楓、久しぶりですね
実は君達に手伝って欲しいことができたんですょ」
マーシャルは、船から降りると
楓にそう話した…
楓は驚いたが
マーシャルに会え、嬉しくもあった
マーシャルの
手伝って欲しいこととは
一体何なのか?何が起こったのか?
楓には、まだ知る由もなかった
新たな異世界への旅が
待っている事を…。
最後まで読んでくださり
ありがとうございました
楓の異世界への旅は
まだまだ続きます




