異世界は一瞬の煌き(第16部分)
声を掛けてきたのは、楓そっくりの
この異世界の彼女だった
彼女
「大丈夫ですか?…」
月明かりのみで、辺りは暗くハッキリ見えない
楓
「はい ありがとうございます」
楓が顔をあげる、月明かりに照らされてハッキリ顔が見えた
彼女
「キャッ!…えっ?!……」驚いた表情を浮かべている
楓
「驚かないで、大丈夫ですから…それよりも…」
彼女
「はい…えっと…」
楓
「私は楓と言います、貴女は?」
彼女が、この異世界の自分なら
気兼ねない言葉が落ち着くだろうと思った
彼女
「私?…私は…香穂といいます」
楓
「香穂さん、素敵な名前ね、どうぞよろしく」
香穂
「こちらこそ、よろしくお願いします、
大丈夫でしたか?倒れられていましたので、
とりあえず、家で休まれませんか?…」
楓
「ありがとう…お言葉に甘えて…お邪魔させていただきます」香穂に微笑む
香穂の家へと向かっていく、楓は一度後ろを振り返って大樹と扉への場所を心に刻んだ…。
「帰れるのかしら、誰かがあの扉を開けてこちらに着た時の為に…」ブレスレットの目印をそっと置いた
香穂の家へ着く、住宅はやはり変わっている
どの住宅も涙形やドロップ型で、宙に浮いている
これは、異世界共通なのか?
家全体が光り、照明がいらない様だった
ドロップ型の家は、3階建が主で
細い部分が天井、1階が寝室、2階がキッチン
3階がリビングとなっていたが、
香穂の家や他の住宅は、少しずつ異なって個々に違っている様子だった
香穂のリビングでは、紅茶の様な飲み物をいただいた、飲食物はさほど変わらず、楓は少しホッとしていた
今夜は、香穂の家で休ませてもらうことにした
楓は、いきなり異世界の話はせず、香穂の驚きを察して、倒れたのは、貧血の様なもので、
2人が似ている話し等で、数時間をリビングで
過ごし、その後1階へと降りた…。
翌日、香穂と連れだって、あの大樹と
扉のあった場所まで向った
大樹の側まで行くと、扉は現れ開いていた、
その場で驚きのあまり顔が青く
言葉を発する事さえできない香穂は
そのままベタンと座り込んだ
現れていた扉を、覗き込むと、隆史や叶恵達が
心配そうな表情を、浮かべながら
こちらを見ていた、
楓
「隆史さん、叶恵こっちに来れる?…」
隆史
「大丈夫かい?心配してたんだ、もう1週間経ってるんだょ楓、あぁ…今行くょ…」
隆史と叶恵、真、耀が扉から入って来た
扉が、閉まらないように本を挟み込むと
扉は、消えることなくあった
楓
「1週間?…やはり時間の流れが異なってるのね…実際は1日だもの…」そんな事を考えていた
この異世界の香穂の力を借りて、
まずは古布(羊皮紙)を探さなくてはならない
座り込んでいる香穂に、皆が揃った所で、
大樹の傍に腰掛け、楓達が、扉を通り
この異世界へ来たことを、話し始めた
香穂も青ざめた顔のまま、じっと楓達の話に耳を傾けでいる、総ての話を、
この場で理解することは難しいだろう、楓はあの日を、ふと思い出していた
香穂
「…全部は難しいですけど、皆さんとあの扉の事は何となく理解できたように思えます…」
青ざめた顔のままだったが、香穂なりに理解しようとしているのだと、楓は感じていた
楓
「ごめんなさい、香穂さん、いきなりで驚いたわよね、ゆっくりで良いのよ…」
一同、顔を見合わせながら
隆史
「香穂さん…急ですまないのですが、古布を見かけた事はないだろうか?」
叶恵
「突然ごめんね、沢山色々考えさせてしまったわ」
耀
「香穂さん、この異世界の古布は貴女が記した物ですょね?…」
耀はいつも、突然驚く発言をする
全員が、一斉に耀を見つめた
香穂
「あぁ…これの事かしら?」
そう言いながら香穂は、
バッグから、当たり前の事のように
書きかけの古布を、とりだしてみせた
楓は、自分や叶恵そっくりの彼女、香穂が
あっさりと、普通の事のように
古布の話をすることに、驚きを隠せなかった
古布は既に、3分の2ほど書き記されていた
その古布には、石(宝石)の場所が記されていた
楓は香穂にお願いし、隆史、叶恵、真、耀と
全6人で、その場所へと向った、
他の古布の話も是非、
香穂に尋ねなければならない
香穂のいう不思議な石、その場所は
この異世界の、南側に位置する湖の側には、
あの大樹と同じ若木がありその側に、
石はあった、薄い紫色に輝いていた
楓が、その石を手にとると、濃い紫色へと強く輝きながら変わっていった
数分輝きを、放っていたが、濃い紫色に変わってからは、輝きはおさまった
今までの石の中では、大きな方だろう
手の平の大きさがあるものの
予想外に軽い、という共通点は変わらなかった
この石の話を、一旦、香穂の家へと戻り聞く
この石を、見つけたのは、扉が出現した場所で
大樹の側で、うとうとしている時に
偶然、地面が光り、
その光の場所を、掘ると出て来た…との話だった
この石は扉の場所とは、無関係には思えなかった
石を扉へかざす、扉は一瞬強い光を放つと
扉の色は、濃い黒みを帯びた色へと変わった、
香穂は
その様子を唖然としながらも
色んな思いが、頭の中を駆け巡りながら
見ていた…。
香穂は、今日は、久しぶりに、街へと出かけた
年に一度のお祭りの日、少しお洒落して、
お気に入りの、翡翠色のブレスレットに、髪飾り
淡く薄い裾が膨らんだ服装で出かけた
街は賑わっている、どの店にも
楽しそうな、笑い声と、お客の声で満ちていた
街の中央付近では、踊りや歌が聴こえてくる
店を回りながら、進む長い人波に香穂は笑顔が耐えなかった、ふと、誰かの視線を感じた気がした
振り返ってみるが、誰もいない、
街中に流れる、華やかで賑やかな声や音楽に
楽しい時間を過ごす事にした
とある店に入り、素敵な髪飾りを買ったり
数時間、お店を巡り楽しんだ
そろそろ帰ろうと思った時、
背後で、扉が閉まる様な音が
小さく聞こえた気がした…。




