何回死んでも転生できません
この作品では登場人物が死にます。キャラクターの死に耐性のない方はお気をつけください
スライムの攻撃、戦士は死んだ。
気がつくと戦士は謎の空間に来ていた。その空間はただただ真っ白で何処を見ても真っ白で戦士は一人そこにいた。
「テケテーン」
突然何処からか女の声が聴こえてくる。
「私はめが」
気がつくと戦士は教会で蘇生させられていた。
「よかった生き返った」
魔法使いが心配そうに言った。
「痛いところはないか」
格闘家も心配している。
「すまない、俺が守ってやれてれば」
勿論勇者もだ。
「ああ、大丈夫だ」
そう言って戦士は起き上がろうとした。
その時だった。
一瞬にして世界が回転し、教会の天井が見えた。
気がつくと戦士は謎の空間に来ていた。その空間はただただ真っ白で何処を見ても真っ白で戦士は一人そこにいた。
「テケテーン」
突然何処からか女の声が聴こえてくる。
「わた」
気がつくと戦士は教会で蘇生させられていた。
「すまん。わしが昨日ワックスをかけたばっかりに」
神父が謝った。
「なので今回はただにしたいのじゃが、しすてむというモノのせいでそれが出来んのじゃ。すまんのう」
金はキッチリ取られた。
戦士はこのパーティーの誰よりも弱かったが、モンスターを見つけると誰よりも先に襲い掛かった。それはまるでモンスターに自分を攻撃させる為にも思えた。
戦士は幼い頃から夢物語が大好きだった。自分もいつか仲間達とパーティーを組んで魔王を倒しに行くんだと信じていた。仲間達からは頼りにされ、敵からは畏怖され、一般人からは感謝される。そんな存在になれると信じていた。なのに現実は違った。
戦士は理想と現実のあまりにも大きいギャップに苦悩した。そんな時戦士の耳に飛び込んで来たのは異世界転生でチートハーレムという噂だった。
気になって調べてみると、それは死んだ人間が神の力で異世界に転生し更にとても凄い力を貰えるというものらしかった。
それからというもの戦士は事あるごとに死のうとしてモンスターに向かっていった。
野生のスライム。野生のゴブリン。野生のトロール。野生のゴーレム。野生のグレムリン。
見かける度に立ち向かって行っては、その度に死んでいった。
「テケ」
またいつもの女の声が聴こえる。
そして気がつくといつも通り戦士は教会で蘇生させられていた。
ある日の晩、戦士は勇者に訊いた。
「自分はこのパーティーで誰よりも弱い、お荷物だ。それなのに何故何度も高い金を払ってまで生き返らせる」
すると勇者は怒りながらこう言った。
「仲間だからだ」
その日の夜は何故か二人で泣きあい。気がつけば二人笑いあっていた。
ある日、戦士達はドラゴンに連れ去られた少女を助けて欲しいという以来を受けて山を登った。山には霧がかかっていたが何とか無事ドラゴンのいるところまで辿りつく事が出来た。
ドラゴンが大きな口を開け少女に襲い掛かろうとしたその時、後ろ足に何か衝撃が走った。
見るとそこには戦士がいてドラゴンの足を斬り続けていた。
ドラゴンは一旦少女を食べるのを止め、まずは小うるさい戦士を仕留める事にした。
ドラゴンは前足を大きく振り上げ、その鋭い爪を戦士に向けて振り下ろした。
また死ねるのか。戦士がそう思って死を受け入れようとしたその時だった。
ガキーンという音が響き渡った。
見ると目の前に、戦士とドラゴンの間に勇者がいて
その盾でドラゴンの攻撃を防いでいた。
それからはあっという間だった。
勇者が盾でドラゴンの物理攻撃を防ぎ
格闘家が力任せにドラゴンの鱗を引き剥がし
魔法使いがドラゴンの口から出る炎を魔法で相殺した。
格闘家がドラゴンの鱗を剥がし終えると、その防御力はグンと落ち
最後は勇者に誘われて
戦士と勇者の二人でドラゴンに止めを刺した。
戦士にとってモンスターを倒すのはこれが始めての経験だった。
はじめて感じる高揚感に戦士は何だか背中の辺りが痒いような気がした。
「ありがとうございます」
そう言って少女が戦士に抱きつくと、戦士はそのままバランスを崩して後ろに倒れてしまった。
後頭部に鈍い衝撃が走って戦士は意識を失った。
気がつくと戦士は謎の空間に来ていた。その空間はただただ真っ白で何処を見ても真っ白で戦士は一人そこにいた。
「テケテーン」
突然何処からか女の声が聴こえてくる。
「私は女神。戦士よ貴方は死にました。しかし私の力により貴方は異世界に転生する事が出来ます」
戦士の目の前には夢にまで見た女神が立っていた。
「ふう、やっと言えました」
目の前の女神は何故かドッと疲れているように見えた。
そして戦士は女神にこう言った。
「ありがとう女神様。しかし私は異世界には行かず、自分の世界で大切な仲間達と一緒に旅を続けていきたいと思います」
それからというもの戦士は幾度となく死に、幾度となく生き返ったが、あれから女神に会う事は一度もなかった。
異世界転生のある世界にもしも蘇生手段もあったとしたら
今回は我ながら自信作です。