異世界転生出来る奴はチート能力を貰う前から大体それなりのスペックを所持している。
この作品には一部、流血などの表現が含まれます
原山文太は幼い頃から異世界に憧れていて、自分もいつの日かあの主人公達のように異世界に飛ばされてチートハーレムを築けると信じて何の努力もせずにただダラダラと過ごしていた。
ある日、文太が学校へ行こうと横断歩道を渡っていると信号無視をしたトラックに轢かれてしまった。
これで俺もついに異世界転生が出来る。そう確信した文太であったが何かがおかしい。
赤くぼやけた視界の先に誰かの脚が見え、その脚が自分のものだと理解したと同時に今まで麻痺していた痛みが一気に溢れ出てきた。
文太は叫び声を上げ体をジタバタさせた。体を動かす度に背中の方でピチャピチャと音がして生温かい感触が気持ち悪かったが、体が痛くてジッとしている事が出来なかった。
暴れ疲れたのか痛みに耐え切れなくなったのか、その真相は定かではないが文太の意識はやがて途切れた。
気がつくと文太の目の前には髭面のおっさんが座っていた。
「あのー、あなたは一体誰ですか」
文太は目の前のおっさんに恐る恐る訊いた。
「ワシは閻魔大王じゃ」
は?閻魔?どういう事だ。ここは普通女神じゃないのか?
文太の頭の中は?でいっぱいになった。
「なんじゃ混乱しておるのか」
目の前に見ず知らずの髭面のおっさんがいたら混乱もします。
「気の毒じゃがお主は死んだんじゃ」
原因はあの時のトラック。はい、わかってます。
「まずはその事を受け入れて」
大丈夫受け入れてます。受け入れてますけど、
「なんで、おっさん何だよぉぉおお」
文太は思わず声に出して叫んだ。
「え、どういう事」
閻魔は思わず聞き返してしまった。
そして、ここから原山文太の熱弁が始まる。
「俺は何処にでもいるごく普通の学生だ」
「どう見ても普通じゃないよ。お主はとても不細工じゃよ」
「そして彼女もいない」
「その顔ならまあそうじゃろうな」
「これと言って目立つところもない」
「いやいや、その顔はある意味立派に目立っておるよ」
「特技もない」
「見た目がダメで中身もダメとかお主最悪じゃな」
「これだけ条件揃ってたら普通は女神が現れてチートスキルくれたりして異世界転生するところだろーがああああ」
「は?」
そして此処から閻魔大王のターンが始まる。
「まず異世界行く奴ってごく普通とか言いつつ大体イケメンじゃん」
「・・・・・・」
「何処にでもいるごく普通の~とか言っておきながら、無駄に知識が豊富だったり異世界で役に立ちそうな特技を何かしら持ってるじゃん」
「・・・・・・」
「でもお主には何もないじゃん」
「・・・・・・」
「お主にチートスキル与えたところでバカそうだし絶対使えこなせないじゃん」
「・・・・・・」
「顔なんて下手なモンスターより醜いし、下手にチートスキル持ったところで地元の勇者に討伐されるのがオチに決まっておるじゃん」
「・・・・・・」
「それならいっそ、此処で一度自分というものを終わらせてみた方がワシは良いと思うのじゃよ」
「・・・うっ、ひっぐ、えっぐ」
文太は何も言い返せず、気づいたら泣いていた。
「なあ閻魔様」
精一杯強がった感じの笑顔で文太が言った。
「なんじゃ」
「最後に聞かせてくれよ」
「なんじゃ」
「俺をひき殺したトラックの運転手はどうなったんだ」
「あー、アイツか。アイツはなあ」
「ちゃんと捕まったのか」
「一度は捕まったが、その顔と男手一つで幼い子どもの面倒を見ているという人柄がニュースで報道されてな」
「それを見た全国の人が署名を書いて異例ではあるが何のお咎めもなしじゃ」
「は?」
「ひき殺されたお主の顔がネットで拡散されたのも決めてじゃろうな」
「はあ?」
「最後の最後に人の役に立ててよかったのう」
「はあ?テメーふざけんなよ。何だよソレ、俺は、、、」
喚き散らしながら文太は黒服の男達に連れられて扉の向こうへと姿を消した。
異世界転生する奴って、大体何かしらの役に立ちそうな知識持ってるし
声もイケボだし
顔も作画崩壊してなければ整ってるし
結局元々が凄いんだよね。
って思いながら書きました。