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どうして転生してくれないんですか?

この作品には一部性的・残酷な描写が含まれています

富田繁蔵は九〇という年齢にて天寿を全うした。繁蔵はあの世などという世迷言を本気で信じているわけではなかったが、それでももし天国というものがあったならば先に逝った妻の元へ逝けたら良いなと密かに思っていた。

そんな繁蔵の目の前にやたらと露出度の高い女が立っていた。女は自分の事を女神と言い、喋る度にこれでもかという程の大げさな身振りで体を動かしていた。

女神が体を動かす度にスカートが捲れ太ももの付け根が見えそうになったり、その豊満すぎる胸が零れ落ちそうになっていた。

もしも繁蔵が思春期であったのならば、女神のその色香に惑わされ言われるがままに異世界転生というものをしていたのかもしれない。

しかし繁蔵は思春期というものをとうの昔に終えていたし、その頃に出会ったのは女神ではなく母の実家の近所に住む年上のお姉さんだった。

夏休みに繁蔵が山に虫捕りに行った帰りに転んで怪我をし、泥だらけになりながら歩いていた。この頃繁蔵は泣き虫で、事あるごとに泣いて母を困らせていたが、その母のお腹が大きくなりいずれ弟か妹が生まれてくると言われてから泣くのを我慢するようになった。

この日も泣くのを我慢しながら歩いていると偶然にも近所のお姉さんにバッタリ出会った。

お姉さんは繁蔵に気づくと駆け寄ってきて心配そうに声をかけてくれた。繁蔵は最初こそ強がってその手を振りほどこうとしたが、やがて根負けしてしまいお姉さんの背中に体を預けた。

お姉さんの背中はまだ子どもだった繁蔵にはとても大きく、全てを預けてしまいたくなった。肩から回した手に僅かに触れる胸は服の上からでもとても柔らかく、お姉さんが歩く度にその背中が心地よく揺れ安心した繁蔵の目から涙が零れた。一度零れた涙は止められず、繁蔵はお姉さんに気づかれないように声を殺して泣いた。

やがて泣き疲れた繁蔵はいつの間にか寝てしまい。目が覚めるとそこはお姉さんの膝の上だった。目の前にあるのはお姉さんの大きな胸で、最初は顔が見えなかったが、繁蔵が目を覚ました事に気づいてその胸の上から顔を覗かせた。

お姉さんのその笑顔は繁蔵にとって夏の太陽よりも眩しくてドキッとした。気恥ずかしくなった繁蔵は耳を真っ赤にしながら体を反転させ、その顔を見られないようにお姉さんの膝に顔を埋めた。

泥だらけで眠っていた繁蔵はお姉さんに抱き上げられ脱衣所に連れて行かれた。脱衣所に着くとお姉さんは自分の服を脱ぎはじめ、繁蔵はただ呆然と立ち尽くした。初めて目にする母親以外の大人の女性の裸に繁蔵の中で今までにない不思議な感覚が芽生えはじめた。

繁蔵は着ていた服をお姉さんに脱がされそのまま二人でお風呂に入った。

繁蔵はお姉さんに体を洗われ、無防備なお姉さんの胸が事あるごとに当たりドキッとした。

お姉さんに体を洗ってもらうと今度は繁蔵がお姉さんの体を洗ってあげる事になった。最初こそただその背中を洗っていたが、ふと今までの事を思い出しその胸に触れてみたいと思った。そう思ってしまった繁蔵の心臓は運動した時とは比べ物にならない程強く鼓動を打ち、お姉さんに、いや風呂場に反響してこの家に居るみんなに聴こえるのではないかと思った。

繁蔵の手が止まっている事に気づいたお姉さんが声をかけると、繁蔵は慌てて混乱してしまい、その勢いで気がつくとお姉さんの胸を揉んでいた。我に返ると繁蔵は顔を真っ赤にし胸から手を離した。お姉さんに怒られるかと思ったが、お姉さんは少し困った表情で笑顔を向けるだけだった。

そんなお姉さんの今までに見たことのない表情を見た繁蔵は、自分のこの気持ちのぶつけ処が分からず風呂場を飛び出した。

その日の夜繁蔵は布団の中で一人、罪悪感と高揚感の中で初めて自慰をした。

次の日からもお姉さんは何事もなかったかのように普通に見えたが、繁蔵はどうして良いのか分からず次第にお姉さんを避けるようになっていった。

お姉さんの表情が曇る度に繁蔵の心も曇り二人の間の距離が大きくなり始めた頃母が弟を出産した。

弟が生まれてからお姉さんは弟にばかり目を向けて、繁蔵にとっても弟は勿論可愛かったが、それでも繁蔵はお姉さんに可愛がられる小さな弟に嫉妬していた。

母のお腹が大きくなってから一切の我侭を言わなかった繁蔵であったが、この日ついに我侭を言った。最初はただ無言でお姉さんの服をひっぱり家の中や庭を連れ回した。やがて家の庭に小さな水溜りを見つけると繁蔵はわざと転び泥だらけになった。その泥水は跳ね僅かながらお姉さんの服を汚した。

泥だらけになった繁蔵は無言でお姉さんを脱衣所の前まで連れてくると、お姉さんは何も言わずに服を脱ぎ始めた。まさかこんなにあっさり行くとは思わず繁蔵は自棄になり、お姉さんを困らせようとして、いや、お姉さんに構って貰いたくて胸を揉んだ。お姉さんはさぞかし困っているだろうと思い顔を見たが、お姉さんの表情は笑顔だった。

お姉さんと体を洗いあい、二人で湯船に入るとお姉さんに導かれるようにしてぎゅっと抱きしめられた。そして繁蔵は遂に言葉にしてお姉さんに我侭を言った。

繁蔵の我侭を聞いたお姉さんはそれを快く受け入れ、その日の夜繁蔵と一緒の布団で眠った。

やがて夏休みが終わる頃、母も落ち着き繁蔵は迎えに来た父に連れられ家族で自分の家に帰る事になった。

それからも繁蔵は毎年、年明けになると母の実家に行きお姉さんと会っていたが、あの時のように夏休みに行きたいという願いは交通費の関係もあってか叶えてもらえなかった。

ある夏の日、遂に願いが叶ったのか繁蔵は母の実家に行ける事になった。父は仕事で忙しく、母はまだ幼い弟の面倒を見なきゃいけないので、繁蔵は一人で新幹線に乗って母の実家へと向かった。

毎年会っている筈のお姉さんではあったが、夏の日に会うのはあの日以来でとても懐かしい感じがした。

ある日お姉さんは知らない男を連れて来て、その男に繁蔵の事を甘えん坊の可愛い弟だと紹介した。

男は背が高く笑顔が爽やかで、この日繁蔵は今まで自分がお姉さんに恋をしていた事に初めて気づき、気づいたと同時に失恋をした。

お姉さんはその男と結婚して此処を出て行くらしく、その引越し先は繁蔵の家から距離こそあったが電車一本で行ける場所なのでいつでも遊びにくるように言われた。

それからというもの繁蔵は年明けに母の実家に行く事もなく、お姉さんの家に遊びに行く事もなかった。

やがて大学生になった繁蔵は家を出て、大学に通いやすいという理由でお姉さんの家に下宿する事になった。

この頃になると繁蔵にも同い年の彼女が出来ていて、お姉さんへの想いは胸の奥へと消えていた。

久々に会ったお姉さんのお腹は大きかったが、何故か全体的にやつれているように見えた。

旦那さんは繁蔵を笑顔で出迎えてくれたが、やがてお姉さんの体に痣が見えてきて、お姉さんは妊娠するのは初めてで上手く体を動かせないからよく転んだりしてぶつけるのと言っていたが、繁蔵は心の奥でそれを嘘だと感じていた。

ある日繁蔵は大学の友達と遊ぶから帰りは遅くなると嘘をついて、いつも通りの時間に帰宅した。

気がつくと繁蔵は馬乗りになりながら旦那さんを殴っていた。お姉さんは泣き崩れながら何かを叫んでいたが繁蔵の耳には届かなかった。

騒ぎを聞きつけた近所の人が通報したのか、気がつくと繁蔵は警察に捕まっていた。

警察署から帰った繁蔵はこの事を知られてしまい大学を辞める事になった。

お姉さんは流産してしまい、旦那さんとは離婚していた。

繁蔵は何をして良いのか分からず、お姉さんもどうして良いのか分からず、喉が枯れるまで繁蔵に暴言を浴びせ続けた。

繁蔵は何も言い返す事無くただそれを聞き続け、叫び続けて疲れたお姉さんを優しく抱きとめた。

あんなにも大きかったお姉さんの体は折れてしまいそうなくらい華奢で、この人を守ってあげたいとそう願った。

翌日繁蔵は彼女にあって別れを切り出すと、それは思いのほかあっさりと承諾された。

別れた彼女は物陰に隠れて待っていた年上の男と腕を組むと仲良さそうにして去っていった。

大学を辞めた繁蔵は高卒で働きはじめ、やがて収入が安定するとお姉さんにプロポーズをした。

最初はフラれ、その次もフラれ、フラれ続けたがやがて根負けしたお姉さんが首を縦にフり繁蔵はお姉さんと結婚する事になった。

妻は、あの時の事が原因なのか子どもが出来にくい体になってしまい、二人で頑張ったがいつまで経っても子どもが出来ず諦めかけたその時、遂に子どもを授かった。

妻は高齢出産という事もあり娘を抱く事もなく天国に逝ってしまった。

繁蔵は妻を亡くし心にポッカリと穴が空いていたが、それでも妻の残した小さな命を大切にしようと涙を堪え必死に働いた。

ある日娘の笑顔を見た繁蔵の中で何かが壊れ、まだ幼い娘を抱きしめながらその日一日泣き続けた。涙が心の穴を埋めた繁蔵は次の日怒られる事を覚悟して出社した。

上司は何も言わず、無言で缶コーヒーを差し出した。その缶コーヒーは冷たかったが、その味わいは不思議と温かかった。

やがて娘も大きくなり、結婚したいと言って男を連れて来た。

娘に子どもが出来ると繁蔵は孫をこれでもかと甘やかし、娘に怒られていた。

そんな繁蔵も定年になり会社を辞め一人でのんびりと過ごしていた。

八〇を過ぎた頃、繁蔵の体にもついにガタが出始め、娘夫婦の世話になる事になった。

交通事故で父親を早くに亡くした義息は本当の父親のように慕ってくれて、孫も懐いてくれて、繁蔵は快く迎えられた。

やがて娘夫婦と孫に看取られながら息を引き取った繁蔵は気がつくと不思議な空間に立っており、目の前に女神が立っていた。

繁蔵は女神の申し出を断ると異世界転生する事なく何処かへと去っていった。

最初はギャグっぽく書くつもりが気づいたらこうなってました。

勢いのままに読んで欲しいので敢えて詰めて書いてます。この処置が実際どう働いたかは少し不安ですが

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